いち在日朝鮮人のkinchanに在日特権は適用されているのかを検証する(2)根本が間違っている
「在特会」ホームページ等を見ますと、界隈の連中は、我々在日コリアンは他の外国人と比べて特権を享受していると批判しています。ガイジンは主権者(日本人)より法的制度的に差別的に扱われて当然なのに、在日は日本人と同列だから、あるいは日本人にはない特権を享受している、だからけしからん、ということです。
とは言いますが、日本で生まれ、育ち、日本社会の中で生きる私が、特権を享受していると思えることは当然ながら全然ありません。たまたま日本の地で、朝鮮人として生まれおちただけです。税金はガイジンだからといってビタ一文負かるわけではなく源泉徴収でそこそこの額を国と地方に取られていますので、いわゆるパソコンに四六時中かじりついて国士さまを気取る界隈の勘違い連中どもよりは、経済的には大いに社会に貢献できているかと思いますが、外国人登録カードは携帯しなければなりませんし、公民権もありませんし、仮に地方公務員になったところで管理職はムリです。そんな私が「特権階級」だとは、悪い冗談です。
とはいえ、我々在日コリアンは制度創設時には排除されていた国民年金に加入できるようになりました。外国人登録の際に十指の回転指紋をベッタリと取られることもなくなりました。そういえば、私は朝鮮学校出身ですが、朝鮮高校は高体連に加盟できたおかげで公式戦に出られるようになり、全国大会にも出場できるようになりました。通常の料金よりセコイ額が割高だったJRの定期券も、他の学生と同額でOKになりました。大検を取得することなく大学も受験できました。最近は高校無償化から排除されたり、補助金カットされたりと、60年前に戻ったような空気感の変遷を覚えますが、社会人である私は、普通に生活する限り、差別に遭って苦しむということも少なくなってきました。
しかし、これらはすべて、「日本人と平等に」扱われるようになった、っていうだけの話で、合理性のないところにわざわざ植民地主義丸出しの格差を付け、制度が差別を煽っていたものが、在日コリアンや理解ある日本人の先輩たちの、犠牲と汗と勇気ある声で是正されてきたものです。決して日本政府が自発的に与えてくれた恩恵などではありません。それを「特権」とは、本当によく言ったものです。
界隈の連中が我々を責める最大の根拠は、我々の祖先、つまり日本に渡来してきた世代が、「ただ単に」出稼ぎにきた連中、あるいは朝鮮戦争の混乱期に不法に入国してきた不逞どもなのに、被害者ヅラして、何世代にもわたって、日本政府、日本国民にたかっているのが許せないらしいです。どうして愛する日本にゴキブリのような朝鮮人が我が物顔で住み着いているのか、ということです。
まず、我々全員が全員、不逞どもの子孫かどうかはともかく、「泥棒の子供は泥棒」という発想は、とんでもないです。「種」を憎むという発想モロ出しの、レイシズム、排外主義の凝縮された発想と言えるでしょう。仮に、親の行いが原因で子供がいじめに遭っているとしたら、その子供を救うのが自然な発想でしょう。そういえば在特会界隈の連中は、蕨市の中学校に日の丸携えてデモしかけましたねぇ、恐ろしい発想の連中です。
もっとも、彼らは我々をろくな勉強もせずに泥棒扱いしておりますが、全然違います。日本にこれだけのコリアンがなぜ定住しているのか、その経緯は人それぞれで、在日コリアン60万人には60万とおりの歴史があるのですが、圧倒的大多数の人が日本の植民地支配に端を発しています。
私の両方のじいちゃんは、日本当局に土地を収用され、生きるために日本にわたってきた「元」日本人です。日本の事情で意思とは無関係に日本人になり、巧妙なやり口で土地を奪われ、生きるために本土・日本に渡り、激烈な差別の中で、土木作業に従事し、原爆にも被爆し、本当に苦労して生き延びた人間です。それがいつの間にか日本国籍をはく奪され、あらゆる保障から排除され、死ぬまで「ガイジン」のまま、とことん苦労した人生でした。それが界隈の連中からすれば特権階級らしいです。本当に馬鹿げています。
他にも、例えば劣悪な環境でトンネル掘りや軍需産業で日本を支えた人、日本の軍人になった人、その意志は様々あるにしても、日本人同様、戦争の渦中で苦しみながら必死に生きた「元」日本人が、いまのほとんどの在日コリアンのルーツです。終戦当時の在日コリアンのうち、約3割が日本での定住を選んだと言われています。祖国に帰ろうにも、財産が無いとか、身寄りが無いとか、とにかく長い植民地支配によって祖国にアテが無くなった人の多くが、定住の道を選んだわけです。
我々在日コリアンは犯罪者の子孫、という見立てはあまりにも思慮が狭い。我々の存在は日本の歴史の産物であり、日本政府が過去の歴史を直視せずうやむやにしてきた結果でもあります。朝鮮を併合し、土地を奪い、文化を奪い、名前まで奪い、戦況が進むに連れて、日本人として兵士や労働力に注ぎ込んだわけです。それなのに戦争に負けた後は、さっそく邪魔者扱いし、日本国籍をはく奪して「ガイジン」扱いし、権利付与も保障も行わず軍人恩給からも排除し、治安維持の対象とし、挙句に過去に何をしでかしたかまで消し去ろうと躍起になっています。私から見れば、日本は過去に行った行為の後始末もできない、自分のケツも拭けない困った国なのです。
しかしながら、私は国・政府という「機関」と、国民・市民という「ひと」を同一のファクターで認識し、国家の考え・発想が、イコール国民・市民の考えであるという思考回路は持ち合わせていませんので、日本国・日本政府のていたらくに腹が立つことはあっても、日本人・日本の人々「全般」を嫌いになるなどという、在特会的偏狭発想には陥りません。私は生まれ育った大阪が好きですし、私の周りの素晴らしい日本人たちに囲まれながら、これからも大阪の一市民たる在日朝鮮人としてとして生きていこうと思っています。
少し話が脇道にそれまくった感がありますが、界隈の連中が口にする、「在日は犯罪者の子孫なのに、特権を享受しているから朝鮮に帰れ!」という言いがかりは、大変な失当にあたります。何もかもが間違っています。
もっとも、界隈の連中は、朝鮮人が嫌いだから「朝鮮人帰れ!」と言っているのであって、「不法入国」とか「在日特権」とかいうのは、自分たちの罵詈雑言、誹謗中傷、排外思想を免罪・中和するための抗弁にすぎません。自分たちの趣味の悪い道楽を正当化するための屁理屈です。それこそ、在日が「特権階級」だというのなら、身分を偽って在日になりたいっ、と企てる人間が出てきてもおかしくないとは思いますが、そのような方は一人も見かけません。彼ら自身が我々が特権階級でないことをよく知っていると考えます。いじめるにもいじめる理由が必要で、理由もないのにいじめると「弱い者いじめ」になりますから、公園にゴールポストが置いてあるとか、通名で通帳が作れるとか、本当に取るに足らない理由を探してきて吠えている、本当に情けない連中なのです。
ま、私からすれば、界隈の連中は、担任の先生に叱られている悪ガキが「だって○○ちゃんブサイクなんだもん」って、いじめられる側に責任転嫁しちゃうのを見るみたいで非常に微笑ましい。なぜ彼らが朝鮮人が嫌いになったかは知ったこっちゃないし、たぶん、劣等感の塊のような人間が自分より下劣なものを探したら、(フィクションの)朝鮮人がバッチリだったということでしょうが。別に好いてほしいなどとはこれぽっちも思わないけれども、自分たちで、「卑屈な生き方だなぁ」って思わないんだろうか?って、逆に心配になります。困ったもんです。
次回は、ネット上で転がっている「在日特権」を拾ってきて、本当にそれがkinchanに適用されているかを検証しようと思います。