このブログの始まりとして、私的には軽く、在日コリアン的には少々重い問題を。
いち在日コリアンの見解として聞いてください。こんな考えのヤツもいるよ、ぐらいの価値しかありませんので。
私が生まれたときには、両親から、本名と、通称とをもらいました。
でも、高校生のときに自分の意思で、外国人登録の通称を抹消しました。
特に民族に対する帰属意識が強いというわけではなかったのですが、マジョリティにの中で自分を理解されようと思ったら、マイノリティとして顕在して言いたいこと言ったほうがいいに決まっている、と思ったから、という比較的単純な理由からでした。
そのおかげで、心無い人々の排斥や差別意思の表明にはたくさん遭いました。逆に変な空気読みで差別意識が無いことをアピールするが余り、それが余計に痛々しく感じちゃったりもしたものです。
たとえば、バイトの面接で、履歴書の名前を見た瞬間、「君はいいや」と即効で不採用が決まったり、店で名札つけて働いていて、その名札を見た瞬間、「おぅ、朝鮮人が何でここで働いとるんじゃ？日本人ナメとったらあかんぞ」と、よくわからない理由でクレームつけられたりもしました。
採用が決まった会社（いまもそこに居るんだけどね）に、「いろいろ難しい問題があるから、通名を名乗ってくれたらいいんだよ」と変な気を回されたり、わざわざ私専用の通名欄を拵えた書面を送ってこられたりもしました。
ですが、私は社会生活上の自己の氏名を通名に改めようと思ったことはありません。
私の周辺にいる人が、私と接していくうちに、私が少なくとも犯罪者とか奇人変人ではなく、普通の人間であることを理解しますので、何の心配も無いわけです。「差別もあるのに大変だね」とか変な気を遣われたりはありますが。
ただね、本名で生活をしていると、正直、煩わしいことが多いのです。
例えば、巷の日韓あるいは日朝の話題を、吹っかけられるわけです。
「どういう経緯で日本にいるの？」から始まって、「過去の歴史に対する見解」とか、「なんで帰化しないの？」「なんで帰らないの？」とかに関する見解を求められる。北朝鮮の核疑惑がどうのとか、竹島問題がどうの、拉致事件がどうのとか。そのほとんどすべてが「いち在日コリアンには手の届かない部分」「いち在日コリアンにはどうしようもない話」なのですが、「同じ同胞／民族としてどう考える？」と来る。
「私の隣の北朝鮮（あるいは韓国）代表」に、日本人の代表として見解を求めたい、ということなんでしょうか。
意見表明求められても、「俺関係ないやん」もあるし、特に意見無いこともあるし、よくわからないこともある。
また、それを語らせるなら長々と語らないといけないが、それを語って理解できるだけの知識があるとも、理解しようという意欲があるとも思えない、ということもある。
だいいち即席で公開討論求められて、迷惑なことも相当あるわけです。ゆっくり飯喰いたいこともあれば、ほっといてほしいこともあるわけです。
それが本名で生きてると、街頭でプラカード持ってる市民運動家みたいに思われちゃうのか、ほうぼうから「君の見解を」となっちゃう。世間の、ていうかマスコミが面白半分に取り出してくるいざこざに乗っちゃった人々が、ここぞとばかりに感情剥き出しで吹っかけてくるわけだから、しんどい。煩わしい。
話したいとき、あるいは話すような雰囲気や環境があるときは、話せる話題についてはちゃんと話すから、普段は、普通に平穏に居たいのです。
そういう意味では、通名使って出自を隠しているほうが、そんな煩わしさを喰う可能性は極端に少ないわけです。
同じように、在日というのが顕在化しただけで、「在日だ」という、ただそれだけの理由で、差別感情とか排外感情とか国家間の対立構図を吹っかけられるリスクは格段に高くなっちゃう。多くの在日コリアンが通名を使い生活する、という選択をしているのは、その意味で、正直、ものすごく分かります。
わざわざ帰化もせず、民族的なアイデンティティーをわざわざ維持して生きるんだから、差別心の吐露なんか全部受け止めて強く生きろ、なんて死んでも言えませんわ。
それは感情的な障壁が制度的な障壁に転じた際の、あるいは差別感情の無い人間までをも巻き込んで踏み絵を踏むことを求められた際の、つまり在日がこの社会で顕在して生きる際に往々にして起こる、人間のむごさを知っている私だから、そんなことは死んでも言えないわけです。
ここまで、最初なのに長々と書いてしまいました。
私の考えとかは、少しずつつまびらかにしていこうと思います。まずは気長に付き合ってみてください。相互を理解するための質問であれば喜んで受けます。
いきなり「帰れ」とか「死ね」とかは言わないでね。それは人間としてアカンよ。
