いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

フジ住宅差別事件 ― 典型的なヘイトハラスメント(20151003追記)

先に一応言っておくが、このテの事象(事件化されていない『ありふれたこと』という意味で)は掃いて余りある程あり、私自身及び私の周りの友人知人内では茶飲み話で出る程頻発しているような話であるが、今回、勇気ある女性の告発によって「氷山の一角」が明るみに出た。
ザイニチにはありがちな話ではあるのだが、その規模と手口が醜悪であるので、短く書いてみようと思う。

記事を3点引用する。



民族差別:職場で文書配布は精神的苦痛、勤め先に賠償提訴
毎日新聞 2015年08月31日20時00分(最終更新08月31日21時44分)
http://mainichi.jp/select/news/20150901k0000m040060000c.html

(引用開始)

◇大阪地裁支部在日韓国人の40代女性が3300万円求める
民族差別の文言を記した文書が職場で繰り返し配布され、精神的苦痛を受けたとして、在日韓国人の40代女性が31日、勤め先の住宅販売会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市)と会長(69)に計3300万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁岸和田支部に起こした。
訴状によると、女性は2002年からパート職員として同社に勤務。13年以降、「韓国の国民性は大嫌いです」「うそが蔓延(まんえん)している民族」などと従業員が記した業務日報を、会長が全従業員に配ったなどとしている。
女性は「韓国人などへの憎悪感情や差別意識を従業員に広める意図があるのは明らか。パワハラで人格権の侵害だ」と主張している。今年3月に大阪弁護士会に人権救済を申し立てたが、8月上旬に同社から退職勧奨されたという。
大阪市内で記者会見した女性は「自分を否定された気がして本当に残念」と訴えた。
同社は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。【堀江拓哉】

(引用ここまで)



「社内でヘイト内容の文書を大量配布」従業員が会社を提訴
毎日放送ホームページ 更新:08/31 20:31
http://www.mbs.jp/news/kansai/20150831/00000051.shtml

(引用開始)

「韓国は嘘をついても責任をとらない」など、ヘイトスピーチに該当するような社内文書を配布され、精神的苦痛を受けたなどとして、従業員が勤務先の会社に損害賠償を求める裁判を起こしました。
訴えを起こしたのは、大阪府内の不動産建設会社に勤務する、在日韓国人のパート従業員の女性です。
訴状などによりますと、女性の勤務先では数年前から、業務内容とは関係のない書籍や新聞記事などのコピーが連日、社内文書として配布されるようになったということです。
配布を指導しているのは会社の会長で、業務日報には書籍などを読んだ社員の感想文を抜粋し、「韓国は嘘をついても責任をとらない民族性だと思った」などと書かれていました。
「『在日は税金を払わない』とか、自分の上司が『元から韓国、中国は嫌いで』というようなことを書いているのを見てショックを受けた。『売国奴』とか『国賊』とか、なんで会社でこんな言葉が飛び交うのかが分らない。」(提訴した女性)
女性は今年1月、会社に改善を申し入れましたが状況が変わらず、「社内文書で配布された内容はヘイトスピーチに該当するものであり、こうした行為はパワーハラスメントにあたる」などとして、8月31日、会社と会長に対し3300万円の損害賠償を求め、提訴しました。
訴えに対し会社側は「訴状が届いていないのでコメントは致しかねます」としています。

(引用ここまで)



ヘイトスピーチ」文書を社内で大量配布 パート社員が提訴
関西テレビホームページ 2015年9月1日3時12分更新
http://www.ktv.jp/news/date/20150831.html#0511952

(引用開始)

大阪府岸和田市の住宅メーカーで、いわゆる「ヘイトスピーチ」を含む文書が大量に配布され精神的な苦痛を受けたとして、在日韓国人のパート社員が慰謝料を求める裁判を起こしました。
訴えを起こしたのは、岸和田市の住宅メーカーのパート社員で在日韓国人の女性(40代)です。
訴えによると、住宅メーカーの会長は韓国人などへの差別的な表現、いわゆる「ヘイトスピーチ」を含む文書を数年にわたって全社員に大量に配布していました。
女性が会社側に改善を申し入れたところ退職を迫られたということで、女性はパワーハラスメントに当たるとして、慰謝料など3300万円を求めています。
【原告の女性】
「なんでこんなことを会社の中でされないといけないのか分からない」
会社側は「訴状が届いていないのでコメントできない」としています。


(引用ここまで)



典型的なヘイトハラスメントだ。欧米では「レイシャルハラスメント(Racial Harassment)」という呼称が一般的だが、日本では人種差別扇動を「ヘイト」と呼ぶことが定着しつつあるので、このように呼ぶことにする。

私の視点を説明するために、セクシャルハラスメントの症例を揚げることにするが、職場でヌードポスターを張り出したり、ヌード雑誌を配ったり、その感想文などが平気で流通するようであれば、それは典型的な環境型セクシャルハラスメントだ。

今般の記事や、まとめサイトhttp://matome.naver.jp/odai/2144104433160825901)をナナメ読みする限り、この会社では、会長主導で日常的に業務に関連性があるはずもない『嫌韓本』や排外主義を主張する雑誌などが配布され、その感想文が日報に載せられ、韓国をこき下ろすようなことを書き連ねることが奨励されていたらしい。典型的な環境型ヘイトハラスメントと言えるだろう。

何とも下劣な話だが、この会社のホームページを視て納得する。
https://www.fuji-jutaku.co.jp/
早速社長が、排外主義と反知性主義の象徴ともいえる青いバッジを得意気に付けてニッコリ微笑んだかと思えば(https://www.fuji-jutaku.co.jp/corporate/message.html)、別のページではいまや皇族嫌韓芸人となり下がった例の恥知らずが社長と対談している模様を取り上げている(http://yomiuri-osaka.com/fuji/)。
創業者は、育鵬社の教科書普及にご尽力され、社員を動員して各方面に働きかけを行っているとのこと。華麗なる公私混同である。

サラリーマンである以上(私も常日頃そうであるように)、空気も読まなければならないし、太鼓も叩かなければならないし、ゴマも擂らなければならない。しかし、絵に書いたような排外主義思想にまみれた経営陣が、おおっぴろげに自らの思想の布教活動を、職場の正業時間に持ちこんでくるわけで、付き合わされる従業員はたまったものではない。
そしてその活動によって、辱めを受け、貶められる当事者たる当該女性は、毎日生きた心地がしなかっただろうと推察する。視るのも吐き気がするヘイトスピーチが、職場で奨励されているわけだから。

この問題の最大の核心は、この会社の経営者と構成員が、セクハラであれば恐らく想像できたであろう被害者の苦悩を、圧倒的な非対称性を持つ「日本/非日本(韓国・ザイニチ)」の中では想像すらできずに放置され続けてきたことであろう。先の例に挙げた環境型セクシャルハラスメントの例に当てはめて考えてみればいい。当該女性の苦痛や苦悩がいかばかりであったかと。

加えて、この会社が既に「ヘイトクライム」と呼べる段階にまで踏み込んでいる可能性があることは同時に指摘しておかなければならない。当該女性は、再三会社に対する改善要望や、弁護士会に対する人権救済を訴えている。先月に当該女性はこの会社に退職勧奨を受けている。当該女性のヘイトに抗う声が、退職勧奨に繋がったことは想像に難くない。排外主義的社風がザイニチ従業員を合理的理由なく退職に追い込む、という犯罪的行為にまで垣根が低くなったものだと想像する。嫌韓の流布と奨励というヘイトスピーチという状況から進んで、具体的な迫害行為にまで及んでおり、「ヘイトクライム」とも言える深刻な状況に陥っている、と言える。

参考:ヘイトのピラミッド(http://archive.adl.org/education/courttv/pyramid_of_hate.pdf内のピラミッド図参照(英語))



(20150902追記)

この稿の冒頭、ザイニチにとっては「ありふれた話」だということを言った。
ネット上で紹介されている事象と、私自身のエピソードを紹介しようと思う。

(1)大学におけるレイシャル・ハラスメント
Whoso is not expressly included(関西学院大学金明秀教授の公式ブログ) 2015年5月27日06:35
http://han.org/blog/2015/05/post-156.html

(2)『きむさん』に対する露骨な拒否感
これは私自身の経験である。新卒採用で内定を得た会社から、入社に備えての関係書類が送られてきた。住所や氏名等個人情報を記入する欄の下に、『通名がある際は併記してください』と書かれてあった。私には『金○○』という名前しかない。出生と同時に親から与えられた通名は、使わないから(使わないと決めたから)外国人登録証からも削除した。それが「通名を書け」と、私のためにわざわざ様式を改訂してまで、そんな書類を寄越してきたのには閉口した。元々、朝鮮人の名前で最前線で仕事をさせてくれるような、国籍や民族で変な障壁を設けない場所でなければ入社しないつもりだったのに、入社前からこんな書類が送られてきたのだから、入社が不安で仕方がなかった。
その不安は入社早々に的中する。入社時研修のトレーナーから「お前、すごい名前やなぁ」と開口一番ヘラヘラと嫌味を吐かれ、配属先では何故『きむさん』なのか根掘り葉掘り聞かれ「帰化しないのか」「日本が嫌いなのか」と言われ、客からは「おぅ何でこんなところで朝鮮人が働いとるんや?日本人なめとったらあかんぞ」とケンカを売られたりした。私は入社初期の段階でこの会社に入ったことを心底後悔したりもしたが、そのような嫌味や差別言動を言うような上司や同僚が早々に転勤したり、運良く水の合うポジションに就けてもらえたり、何よりも仕事をする過程で私が奇人変人の類でないことが理解されて、何とか今でもその会社でやれている。事業展開で外国人の採用が増えたり外国との付き合いが増えたこともあるが、少しづつ『きむさん』に対する拒否感も薄れつつあるのかなぁと感じながら仕事を続けている。

私の周りの友人には「通名なら採用する」と言われた者や、スポーツや政治の日韓間の話題を吹っかけられてけなされた経験を持つ者、その他大小様々エピソードには事欠かない。
このような社会背景が凝縮されたようなエピソードがある。
朝鮮学校に子供を送る親である友人は、経営する会社では通名を使っている。彼の朝鮮民族としての自覚が人一倍あるように感じていた私は「本名で仕事しないの?」と彼に訊いてみたのだが、表情が一変した。そしてそれまでの会話では聞くことの無かった低い声で、ポツリと言った。
「お前な、朝鮮人にすんなり仕事をくれるほど、この社会は甘くないで」
そのときの彼の表情が忘れられない。



(20151003追記)

『ヘイトハラスメント裁判を支える会』が発足し、各種広報が配信されているので掲載する。

facebookページ:https://www.facebook.com/HateHarassment?sk=info&tab=page_info

twitterページ:https://twitter.com/HateHarassment

パンフレット(PDF):http://www.taminzoku.com/wordpress/wp-content/uploads/2015/09/7f5fd55eb4872c12b3908519ee9b27432.pdf

雑感だが、この稿を書く際、この愚行をレイシャルハラスメントではなく『ヘイトハラスメント』と書いた。一般呼称ではなく、日本で差別扇動を意味する言葉として定着しつつある『ヘイト』を使うことで、この愚行の醜悪性をより多くの方に共有してもらいたい、という思いだった。
今般『ヘイトハラスメント』という言葉を掲げて会が発足したことは、この会が、日本全国で展開されるアンチヘイト活動と歩調を合わせるにも意義があると思うし、支援の輪が広がりやすいと思う。会の名が体を表し、分かりやすくていいと思う。
今後も、何か動きがあるようであれば、追記するか新たに稿を設けることによって、側面支援ができればと考えている。