いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

日本政府、朝鮮学校への補助金交付に『留意』を通知 ― 朝鮮学校生徒へのレイシズムそのもの

恐れていたものは現実になった。文科省朝鮮学校に各自治体が拠出している補助金に対し、『留意』を示すという、前代未聞の通知を発出した。



文科大臣通知
27文科際第171号
平成28年3月29日

北海道外1都2府24県知事 殿
文部科学大臣 馳 浩
朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)

朝鮮学校に係る補助金交付については、国においては実施しておりませんが、各地方公共団体においては、法令に基づき、各地方公共団体の判断と責任において、実施されているところです。
朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。
ついては、各地方公共団体におかれては、朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上、朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ朝鮮学校に係る補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討とともに、補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施をお願いします。
また、本通知に関しては、域内の市区町村関係部局に対しても、御周知されるよう併せてお願いします。
なお、本通知の内容については、総務省とも協議済みであることを申し添えます。

(強調は引用者)



文面をどう読んでも、これは『朝鮮学校朝鮮総連北朝鮮』だから、補助金は出すな、と文科大臣が各地方自治体知事に圧力を加えるものである。

>我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。
>ついては、各地方公共団体におかれては、朝鮮学校の運営に係る上記のような特性も考慮の上、(中略)補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保及び補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施をお願いします。
>本通知の内容については、総務省とも協議済みであることを申し添えます。

露骨に、朝鮮総連はキタチョーセンで、日本政府は気に入らないから、支出している補助金を見直せと言っている。地方自治を束ねる総務省にも根回しを怠っておらず、支出を続ける自治体に圧力をかけるということを表明している。補助金の趣旨・目的に関する住民への情報提供の適切な実施」、つまり、朝鮮学校に支出をするときはきっちり情報公開して『市民の批判』に耐えて見せろ、とも言っている。「朝鮮学校に通う子供に与える影響にも十分に配慮しつつ」とはどの口で言うのか失笑しか出ないが、朝鮮学校に通う生徒の学びを、物理的に封殺せよ、と言っているも同然である。

それなのに、記者会見で再三再四そのことを問い詰められた文科大臣の馳は、朝鮮学校補助金を出す権限は自治体側にありますので、私としては留意点を申し上げただけであって、減額しろとか、なくしてしまえとか、そういうことを言うものではありません」とか、「私から減額とか、自粛とか、停止とか、そのようなことを指示する内容ではありません。朝鮮学校の置かれている特性を踏まえて、また、補助金交付のいわゆる執行に当たって、適切な対応をしていただきたいということです」と、幼稚に逃げ回った。
補助金を出すな、と自分の名前で明確に圧力をかけておきながら、その判断の責任は地方自治体の長が負え、と言うのだ。
それでいて各自治体がどのように取り扱ったかは、実態を自分も把握する、と言ってのけやがったのだ。
http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1369062.htm



(自分が気に入らない)キタチョーセンに親和性を持つ朝鮮学校の児童の学びを、物理的な圧力によって遮断する、という政治攻撃を露骨に仕掛けておきながら、自分は知らぬ存ぜぬとは何事か?
いっそのこと、自分は朝鮮学校の生徒を政敵として取扱い、その生徒らの学びを妨害することによって、自分の政治的目標を達成する、と高らかに宣言すればいいではないか?
自らが差別主義者であり、自らの差別心を満たすために、朝鮮学校の子供らの心に暗い影を落としてやるのだ、と何故言えないのだ?
差別主義を討っておきながら、自らの行為が差別だと認めることもできないのか?
どこまでも、姑息・醜悪・卑劣・卑怯だ。
思いつくコトバのいずれを天秤にかけても、釣りあうものが見つからないほど、醜く、野蛮だ。



安倍は朝鮮に圧力をかけるという政治姿勢で国民の歓心を買い、課長が社長になるように三段跳びで総理大臣にのし上がった。その成功体験の酔いから醒められず、何度も何度も朝鮮への攻撃を止めようとしない。
しかし朝鮮本国に相手にされないものだから、『内なる北朝鮮』たる朝鮮総連及び朝鮮学校に好き放題の圧力をかけ続ける。
安倍が政権を奪取した直後、真っ先に朝鮮高校を高校無償化法の対象外にしたことがその象徴だが、一部自治体が細々と続けている補助金にまでとことん難癖をつけることで、国民のささやかな歓心を得ている。そのことで度重なる失策の失地回復を図っている。
実際、安倍が肌身離さず自慢げに身につけている、青いバッジの恥知らず集団が、今回の一件が自らの要請に基づくものだと書いている。
http://www.sukuukai.jp/mailnews/item_5318.html
朝鮮学校の生徒を弱い者イジメしたら、自分たちの家族が帰ってくると踏んでいるのなら、余程の世間知らずだ。
目的と手段の不一致が過ぎる、と思わないのか?
この青いバッジを嬉々として身につけている者には軽蔑心しか湧かないのは私だけではなかろう。



考えてみてほしい。
朝鮮学校生徒の補助金を全廃したとして、日朝間の外交課題は改善するのだろうか?
朝鮮学校生徒の学ぶ環境を破壊して、ミサイルが飛ばなくなったり、拉致された人々が帰ってきたり、日朝間あるいは南北朝鮮間の緊張関係が緩和されたり、という日本の政治課題に資する動向が導けるのか?
もし、そのように主張するなら、どういう回路でそれが可能なのか、明確に説明すべきなのに、何故しないのか?
先に私から結論を示すが、そんなことはあり得ない。



では、効果が無い政策を何故に打つのか?
それは、朝鮮人であれば、理屈に合わなかろうが、支離滅裂であろうが、国際人権法やあるべき民主主義社会の姿に反してようが、貶めても辱しめても不遇を負わせても構わない、それで国民の些細な歓心を買えるのであればそれで構わない、と思っているからではないか?
この政策の目的は、「キタチョーセンの勢力に属する人間を差別したい」「キタチョーセンが気に入らないから八つ当たりをしたい」「キタチョーセンを蹴落とすことで政治的なアリバイを拵えたい」という鬱屈した為政者の暗い差別心所以としか説明がつかないではないか?



これは、『レイシズム』そのものである。国家ぐるみで朝鮮学校の生徒をいじめる、『上からのレイシズム』そのものである。
国家が上から、確信を持ってレイシズムを仕掛けているのである。
国家がお墨付きを与え、政策として具現化した、朝鮮人に対するレイシズムである。国家の保険がかかった、国家主導のレイシズムである。
それにチカラを得た巷のレイシストが、『下からのレイシズム』に興じる。巷のレイシストの、娯楽と化したヘイトデモが、今日も明日も続く。
上が率先してやっていることを、下にやるなと言えるはずもない。アリバイ程度に適当に『摘まむ』ことはあっても、警察はレイシズムを護り、カウンターを排除する。今日も明日も一貫した、日本政府の態度である。日本の為政者にとって、朝鮮人は『利用し続ける』存在なのだ。差別が無くなると困るのだ。
そりゃ、差別は違法だと法律で定められるはずもない。為政者自らがレイシズムとズブズブなのだから。



私の息子は、明日から朝鮮初級学校の2年生だ。
程なく自分が朝鮮人であるという自覚が芽生え、同時に取り囲む地域が、社会が、自分らを『疎ましい存在』だと捉えていることに気づくだろう。
テレビで、ネットで、新聞で、朝鮮学校が排除されるニュースが、発し手から何の違和感や疑問点も呈されないまま次々と流れてくるのだ。
息子もバカではない。息子に「アッパ(父さん、の意)、なんで僕は朝鮮人なの?朝鮮学校は悪い学校なの?」と質問されたら、何と答えようか?
巧く応えられる自信が、全然無い。

ここ最近、陰鬱な気持ちを禁じ得ない。



(付記)
当該『通知』に関して、強い憤慨を示す記事を2点紹介する。



「きわめて政治的で差別的」/不当な文科省通知の撤回を ― 朝鮮学園理事長、朝鮮高級学校校長、生徒らが要求
朝鮮新報 2016.03.31 14:20
http://chosonsinbo.com/jp/2016/03/sk331-7/

(引用開始)

地方自治体から朝鮮学校に支給されている補助金について文科省が「留意」を求める通知を出したことに関連して、3月30日、全国朝鮮学園理事長、全国朝鮮高級学校校長会、朝鮮学校全国オモニ会連絡会代表たちと東京朝高に通う2人の生徒が文科省で、抗議と記者会見を行った。
これは3月29日に文科省が、朝鮮学校が設置されている北海道と1都2府24県の知事あてに文部科学大臣の名義で「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」の通知を出したことに対して行われた。この通知書は、朝鮮学校朝鮮民主主義人民共和国、総聯の関係性を指摘し、地方自治体に対し、「補助金の公益性と教育振興上の効果」に関する検討と、補助金の趣旨・目的に沿った「透明性」のある執行を求めたもの。
これに対し、朝鮮学校関係者側は記者会見で談話を発表。談話では、外交・安保問題と何ら関係のない朝鮮学校に対して、朝鮮や総聯との関係を問題視し、各地方自治体の判断に委ねられている補助金交付について「留意」を促す異例の通知を出したことは、きわめて政治的で差別的な措置だと非難した上で、これを撤回し、朝鮮高級学校生徒たちへの「就学支援金」制度適用除外などの朝鮮学校児童生徒たちへの差別的措置を直ちに廃止することを求めた。
昨年6月、自民党拉致問題対策本部は「対北朝鮮措置に関する要請」13項目の中で政府に対し、「朝鮮学校補助金を支出している地方公共団体に対し、公益性の有無を厳しく指導し、全面停止を強く指導・助言すること」を求めた。その後も、自民党を中心に見直しを求める声が上がっている。その中で、文科省は今回「異例」とも言える、補助金に対する初の通知を地方自治体に通達。記者会見では、政府の「政治的意図」に疑問を呈す発言が相次いだ。
東京朝高に通う男子生徒は「これまで例のない通知を政府が出したこと自体が、地方自治体に対する圧力であり、私たちにたいする弾圧ではないのか」とし、「政府の姿勢、メディアの報道方法一つで、僕たちをみる日本人の視線は変わる。僕たちを『制裁』の対象で見るのではなく、朝鮮学校で学ぶ一人ひとりの生徒として関心を持って、見てほしい」と訴えた。
「私たちの当たり前の高校生活をすべて否定された気持ちだ」と話すのは同校に通う女子生徒。春休みにもかかわらず、部活動を抜け、祖母との約束も断り、この記者会見の場に来ざるを得なかった。「朝鮮学校への進学を経済的理由によって、あきらめる友人たちがいる。そして人数の少ない中で運営する地方の学校にとって、補助金停止が及ぼす影響はどんなに大きいか。今回の通知は朝鮮学校を閉鎖しろと言っているのと同じ。私は、政府に、人間としての心を問いたい。これ以上、この社会の差別を政府が助長させないでほしい」と話した。
記者会見後、関係者らは文科省に強く抗議した。
「国際情勢が緊張したからといって、教育をつかさどる機関が、民族教育の環境を損ねるような判断を下していいのか」「この時期にこの通知が出たことを地方自治体は、マイナスに捉えるだろう。通知文には『子どもに与える影響にも十分に配慮しつつ』とあるが、それはカモフラージュにすぎない」「このような民族教育への差別が国際社会からの非難をあび、『就学支援金』制度からの朝鮮学校除外は国連から是正を求める勧告も出ている。事態の『異常性』をしっかりと認識してほしい」
このような訴えに対し、文科省職員は、一部のメディアによって、この通知が「事実上の自粛要請」であるかのような報道がされており、地方自治体からも問い合わせが続いていると述べた上で、「これは決して『自粛要請』ではない。そのような問い合わせに対しても、文科省としては、その立場をきちんと説明している」と弁解した。

(引用ここまで)



朝鮮学校に係わる補助金交付に関する留意点について(通知)」発出に対する事務局長見解
2016年3月31日 フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
http://www.peace-forum.com/seimei/20160331.html

(引用開始)

3月29日、文部科学省馳浩大臣名で「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出した。通知は、「朝鮮学校に係る補助金交付は、国は実施していないが、各地方公共団体においては法令に基づきその判断と責任で実施されている」と冒頭で説明している。馳大臣は、記者会見においても「権限は自治体側にあり、減額しろとかなくしてしまえとか言うものではない」と説明している。しかし、通知はさらに、「朝鮮学校は、北朝鮮と密接に関係する朝鮮総連が影響を及ぼしている」と指摘し、「補助金の公益性、教育振興上の効果を十分に検討し、適正かつ透明性のある執行を確保せよ」と指摘している。これまでも私学助成などでは不正な使途を問われた事例がいくつかあるが、地方自治体に対してこのような通知が発出されたことを知らない。行政法の専門家の中には、「事実上、補助金はやめなさいと言っているに等しい」との指摘もある。朝鮮学校において補助金の使途に不正が行われた事実はない。この時期に、朝鮮学校にだけ突然このような文科省の権限を越えた通知がなぜ発出されたのか、馳大臣は説明していない。
自民党は、拉致問題や核実験を理由に、文科省補助金停止を要請してきた。国連からも指摘されているが、朝鮮学校に通う生徒の人権と外交上の問題とは一緒にすべきではない。北朝鮮への制裁措置が強化されているが、その一環としての行為だとしたら、人権への国際基準から言っても許されるべきではない。
朝鮮学校の生徒は、2013年4月以降、現政権によって高校授業料無償化措置から完全に外されている。以降金曜日には、子どもたちや保護者、学校関係者、支援団体などが文科省前で抗議行動を行ってきた。各県で、措置適用を求める訴訟も始まっている。国連の人権委員会や人種差別撤廃委員会からも、人権侵害との指摘が行われている。文科省がそのことを知らないはずはない。神奈川県は、朝鮮学校の授業内容は適正であるとして、保護者への学費の補助を実施している。今回の通知に対しても「国際情勢に振り回されず、学習環境を守るのは大事だ」との黒岩祐治知事の談話が伝えられている。これこそが、人権感覚と言うものだ。朝鮮学校に通う子どもたちは、政治に差別され翻弄されて傷ついてきた。そして朝鮮半島を故国とする者たちの民族教育は危機に瀕している。日本が、民主主義国家であり人権国家であるとするならば、民族教育の権利は守られるべきである。日本の戦前と戦後を通して、日本社会で生きざる得なかった歴史を持つ民族に対して、日本社会はどのようにその責任を果たしてきたというのか。
平和フォーラムは、各自治体がこの通知に左右されることなく、その判断と責任において適切に補助金を交付していくことを、日本社会の一員として強く望む。

(引用ここまで)