「朝鮮学校無償化問題」を知るためのいくつかの資料提示(20150627追記)
最近、橋下大阪市長と、現役の神戸朝高生とがtwitter上でやり取りしたことで、朝鮮高校への高校無償化法不適用、及び、多くの自治体における私学助成金補助金等の公金不支出、凍結が、再び脚光を浴びてきました。
既にこれら行政の差別政策は訴訟の場に持ち込まれておりますし、数多の研究者や、民族を問わず多数の市民がこの政策に抗っています。国連の場でも再三に亘って人権侵害と指摘されています。
拙ブログでも、当該話題については何度も俎上に乗せており、ある意味複数周回を終えている感がありますが、新たに当該問題に関心を持たれてお越しになられた方が、
「肖像画を降ろせばいーんじゃないですか?」
「日本の学校に行けばいーんじゃないですか?」
「朝鮮に帰ればいーんじゃないですか?」
とエンドレステープを持ち込むように同じ科白を書きに来るので、複数周回を終えている私、及び常連の皆様方からすれば、まったく徒労感が拭えません。申し訳ないが、周回遅れの皆様には、既定の周回を終えてから、議論をして頂きたいと思います。当然、そのような方との議論であれば、建設的に進むことと思いますので。
しかしながら、前稿で書いたこととも重なりますが、ある程度歴史的な連続性も踏まえなければなりませんから、学習の蓄積や新たな着眼ということも必要でしょう。アタマデッカチでなければこの問題に関心を向けてはならない、と捉えられるのは私の本意とは違いますし。
そういうわけで、今更ながら「朝鮮学校無償化問題」及び、それの肉付けとして、在日朝鮮人、朝鮮学校を知るための資料提示を、いくつかしておきたいと思います。
【1】朝鮮学校無償化問題FAQ
基本的な問題点の整理は、こちらで全て成されておりますので、先ずはこちらをご覧いただければ。
http://seesaawiki.jp/mushokamondai/
【2】歴史教科書 在日コリアンの歴史
在日コリアンという人種がどのように生み出されたのかを端的に知るために。
- 作者: 在日本大韓民国民団中央民族教育委員会,『歴史教科書在日コリアンの歴史』作成委員会
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 80回
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【3】知っていますか、朝鮮学校
朝鮮学校が何なのか知らない、まったくの初心者にはおすすめ。
- 作者: 朴三石
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/08/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【4】「無償化連絡会・大阪」結成集会レジュメ
約三年前に高校無償化法適用に向けての連絡会が大阪で立ち上がった際の結成集会で貰ったレジュメ。問題点が端的にまとまっており、論点整理に有効。
無償化連絡会大阪レジュメ.pdf
【5】「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書
高校無償化法の適用から朝鮮学校のみが外されているということが、「法的に」筋が通らない、ということを、「法的に」理解する学習資料として有効。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/
特に、こちらに掲載されている、『パブリックコメント』に寄せられた高林敏之氏の稿は、理路整然と論点がまとまっておりとても参考になる。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/20130110
【6】公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント(意見公募手続)の結果について
それに対し、「朝鮮学校に高校無償化法を適用しないのは妥当だ」と強弁する日本政府の文書。言い訳文書としても非常にレベルが低いことが分かる。まさに「判で押したように」朝鮮学校はキタチョーセンで、拉致問題が解決していないからダメだと言っている。つまり自らの政治課題が解決していない責任を子供らに押し付け、政治的に敵対する北朝鮮の勢力に属する子供らを差別的に取り扱います、と国家が高らかに宣言した、まさに歴史的な文書である。
パブコメ結果.pdf
【7】ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して
ネトウヨ界隈が「朝鮮学校が不法占拠していた公園を奪還した行動」として解釈している事件は、実際はどうだったのか、というのを、当事者への丹念な取材から明らかにしたもの。
- 作者: 中村一成
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【8】狙われるチマ・チョゴリ―逆国際化に病む日本
1990年ごろに社会問題化した「チマチョゴリ切り裂き事件」の病巣に迫ったルポ。いまは当該事件が「朝鮮総連の捏造」と言われるまでに言論が劣化しているが、実際、およびその社会背景を知る上で有効。
- 作者: 朝鮮時報取材班
- 出版社/メーカー: 柘植書房新社
- 発売日: 1990/05
- メディア: 単行本
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今後、特に参考図書は増やしていこうかと思っており、その際は更新通知をお出ししようと思っています。何せ、最近の読書量の少なさを恥じている私でありますが、常連様よりご推薦いただいた図書を中心に増強しようと思っています。
(20150114追記・若干参考図書を追加しました)
【9】Q&A 在日韓国・朝鮮人問題の基礎知識
巣鴨明さんのおすすめ。在日韓国朝鮮人問題の入門書ともいえます。私も読んだ記憶があります。
- 作者: 仲尾宏
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2003/11/19
- メディア: 単行本
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【10】在日外国人 第三版-法の壁,心の溝
上記9で思いだした基本書。日本における在日外国人研究者として実績の高い著者によるもの。ロングセラー。私は大学時代にこれで学びました。
- 作者: 田中宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/05/22
- メディア: 新書
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【11】韓国・北朝鮮・在日コリアン社会がわかる本
これはオマケの本。辛淑玉さんの遠慮のない書き方で、韓国・朝鮮・在日のトピックに回答を加えている。辛さんならでわ。いまは絶版だが手に入れてみては。
- 作者: 辛淑玉
- 出版社/メーカー: ベストセラーズ
- 発売日: 1998/07
- メディア: 文庫
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【12】日本の植民地支配 肯定・賛美論を検証する
rawan60さんのおすすめの本。私も機会を作って読んでみようと思います。
日本の植民地支配―肯定・賛美論を検証する (岩波ブックレット)
- 作者: 水野直樹,駒込武,藤永壮
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/11/20
- メディア: 単行本
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【13】歴史教科書 何が問題か ― 徹底検証Q&A
上記12で思いだした本。「つくる会」教科書を検証し、史実より物語性を重視した書きっぷりや、事実の隠ぺい、美化、等を糾弾したもの。私はこれを社会人になって読んだが、自分自身のルーツがどこにあるのかを知るためには、少なくとも「つくる会教科書」で学ばなかったことは良かったことだったと思い知った。同時に、自らが学んだ民族教育の価値は、決して日本の公教育では獲得できなかったものだとも思い知った。
- 作者: 小森陽一,安丸良夫,坂本義和
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/06/25
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(20150124追記)
【14】「朝鮮学校への嫌がらせ裁判に対する意見書」
普段はROMですさんの紹介。同志社大学の板垣竜太准教授(社会学部・朝鮮近現代社会史)が、京都朝鮮第一初級学校襲撃事件民事裁判に提出したもの。朝鮮学校の現在、及びその歴史を眺めるうえで非常に有益。朝鮮学校が「キタチョーセンの学校」ではなく、あくまで在日朝鮮人のための学校であることが客観的に証明されているのをはじめに、朝鮮学校が歴史上日本政府からどのように扱われ、その中で、在日朝鮮人当事者がどのように思考、行動したのか、朝鮮政府との親和性を高めたいきさつも詳細に記述されている。
朝鮮学校の嫌がらせ裁判に対する意見書.pdf
(20150627追記)
【15】 【Q&A】大阪の朝鮮学校と大阪府「私立外国人学校振興補助金」
たぶん、2012年の「無償化」連絡会でもらった資料。「無償化」除外の動きと一体で、大阪府・市の補助金が廃止されたが、その不当性を考えるうえで有益な資料となっている。特に時系列をまとめた図表が事実確認に役立つ。
【Q&A】大阪の朝鮮学校と大阪府「私立外国人学校振興補助金」.pdf
【16】朝鮮学校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A
同様に、「無償化連絡会」でもらった資料。「高校無償化法」の適用が、朝鮮学校にだけ適用されないことの不当性を学習するのに有益。よくまとまっている。
朝鮮学校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A.pdf
【17】朝鮮学校物語 あなたのとなりの「もうひとつの学校」
最近出版された本で、韓国で出版されたものの日本版。実は最近韓国では朝鮮学校に対する理解を深め、支援をしようという動きが少しづつ起きている。この本では、朝鮮学校がどのように起り、変遷したかという歴史解説とともに、内部の人間(学生や保護者)に焦点を当て、何故朝鮮学校に子供を送るのか、が身近に感じられるのが特長。
- 作者: 地球村同胞連帯(KIN),「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会,『朝鮮学校物語』日本版編集委員会
- 出版社/メーカー: 花伝社
- 発売日: 2015/06/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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【18】私の心の中の朝鮮学校
上記17との関連で読んでほしい本。韓国における朝鮮学校支援団体である『モンダンヨンピル』のメンバーである、クォン・ヘヒョさん(俳優=冬のソナタのキム次長で有名)による著書。彼による朝鮮学校への思いが、朝鮮初級学校の児童らの絵に彩られている。クォンさんの想いに感動し感謝すると同時に、初級学校児童らのカラフルな「お絵描き」に心に潤いが溢れる。
- 作者: クォン・ヘヒョ,朝鮮学校の子どもたち
- 出版社/メーカー: HANA
- 発売日: 2012/06/22
- メディア: 単行本
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【19】人種差別撤廃委員会による日本の第7回〜9回定期報告に関する調査最終見解
国連の人種差別撤廃委員会による日本への勧告文書。朝鮮学校への「高校無償化法」の適用、地方自治体の補助金等回復についてはパラグラフ19で言及され、付則では「特に重要な勧告」だと付言されている。この審査過程において日本政府は、前記【6】にも挙げたように、「学校が朝鮮総連と密接な関係にある」「拉致問題が進展していない」ということを堂々と言ってのけ釈明して見せたのだが、この釈明は、最終見解では一顧だにされていない。逆に「国連の場で、政治的な理由をもって朝鮮学校のみを排除することを露骨に表明した」と、委員の怒りを買っているのである。
調査最終見解.pdf