「橋下徹と仲間たち」の支離滅裂は、下品な漫才か、新手の選挙対策か

ここ数日間の橋下徹とその周辺の動きについて、短く記そうと思う。
過日の「慰安婦」発言で、沖縄県民から総スカンを喰ったのを少しでも盛り返したかったのか、「オスプレイ訓練に八尾空港を使ってくれ」と、これまた自分が減らないサービストークでもって、些細な歓心を買おうとして厚顔ぶりを晒した。大阪市長が八尾市長にどの面を下げて要望するのかも分からないし、事前の根回しすら無い。市街地であり、たびたび不時着も起きるような、セスナかヘリくらいしか飛ばせない小さな八尾空港を、何の訓練に使わすのかも見当がつかない。それでいて、「でも本当に使えるかどうかは専門家じゃないから分からない」と言って、自分が言い出したことを専門家やら政府やらに押しつけて自らの責任を回避することも忘れない。この男のクズぶりには流石に参る。この件ではっきりしたのは、橋下一派は大阪府民の安全などは舌も滑らかにお仲間に差し出せ、大阪府民の安寧などは点も望んでいないということだ。こんなんが私が住む自治体の首長なんだよねぇ、本当に恥ずかしい気持ちになる。

最近のこの男の支離滅裂ぶりはスピード感がありすぎてついていけないのだが、今日またまたハチャメチャなニュースが舞い込んできた。おもしろいので記念に残しておく。

「韓国人が日本人を辱めている」中山成彬・維新衆院議員
2013年5月21日21時4分　朝日新聞　http://www.asahi.com/politics/update/0521/TKY201305210418.html

（引用開始）

■中山成彬・日本維新の会衆院議員
韓国人が米国の各州で従軍慰安婦について、日本への非難決議を議会に働きかけたり、高速道路に看板建てて「日本は２０万人の朝鮮人をセックススレイブにした」というのを掲げたりして、日本人の名誉をおとしめたいという運動をしている。（党を除名された）西村真悟さんもそれを知っていて、ああいう発言をした。
韓国人が、従軍慰安婦というありもしなかったことを世界中に悪宣伝し、日本人を辱めている。大事なところは「２０万人もの朝鮮の若い女性」というが、当時は人口は２０００万人ちょっと。ということは１００人に１人の自分の娘や知り合いが強制連行されるのをだまってみていたのか。朝鮮の親たちもそんな弱虫じゃなかったはずだ。
橋下徹市長もね、言ってはいけないこと言ってますよ。国際感覚がない。橋下氏が米国にいったら大変ですよ。集中砲火を浴びるでしょう。だけど、彼がそれを乗り越えられたら、大変なことだよね。
女性を活用という発言は本当に耐えられない。私はそういうこと大嫌いだ。僕は橋下さんと会ったことも話したこともない。自分の息子よりも若いから。類いまれな発信力だけど、もう少し勉強してほしい。日本を背負って立つ政治家になるには一皮も二皮もむけないといけない。（朝日新聞の取材に）

（引用ここまで）

朝鮮人強制連行:維新・中山氏が発言「弱虫だったのか」
2013年06月08日　毎日新聞　
http://mainichi.jp/select/news/20130608mog00m010005000c.html

（引用開始）

日本維新の会の中山成彬代議士会長は７日の党代議士会で、橋下徹共同代表（大阪市長）の従軍慰安婦発言に関連し「韓国は日本人をおとしめようとしている。２０万人を強制連行したと言うが、（当時の人口２０００万人の）１００人に１人の子や近所の娘が連れていかれるのを黙って見ていたのか。そんなに朝鮮人は弱虫だったのか」と発言した。これに対し、橋下氏は記者団に「歴史家がやるようなさまざまな発言は控えなければいけない」と苦言を呈した。

（引用ここまで）

ひとつ目が、橋下の舌禍に関しての朝日新聞の取材に対する、中山氏の５月の発言の要旨、ふたつ目が６月７日の代議士会での中山氏の発言とそれに対する橋下の批判である。
どうやら、中山氏は「朝鮮人が弱虫ではないなら周囲で必死に止めているはずだから、そんな人数強制連行されるはずないから、強制連行というのは誤り」という主張らしい。こんな下らない主張を飽きもせずに２回も行っていたことになる。不勉強な私が言うのもなんだが、まったくの不勉強だし、歴史というものにまともな想像力が及んでいないのが情けなくもある。
歴史修正主義者は常々、慰安婦問題について、「脅迫や拉致による（狭義の）強制連行のみが問題である」と間口を狭め、それに嵌らない事例を全て任意の慰安婦（≒売春婦）という大風呂敷に包むことで、「強制性がない」という主張を繰り広げているのだが、元慰安婦の方々のなかで、歴史修正主義者が設定する『狭義の強制連行』を訴え出ている方は少数派である。多くは甘言やそそのかしによっておびき寄せられたり、辞めたくても辞めさせてもらえなかったり、暴行を受けたり賃金を与えられなかったり、という「強制性」を問題にしているのである。この歴史修正主義者もその例に漏れず、狭義の強制性のみを取り出しているので、卑劣であることは論じるまでもないが、それだけなら（慣れというのは恐ろしいもので）新鮮味も無い。しかし、である。『朝鮮人が弱虫だったかどうか』という低劣な基準は何なんだろう？甘言で騙されて性奴隷にされ遠地に従軍させられたのを、官軍に銃剣で脅されたりして連れ去られるのを、その娘の父母が『弱虫で無ければ』救えたとでもいうのだろうか？弱虫でなければ募集業者に騙されず、弱虫でなければ銃に鎌で対抗できるというのだろうか？
少なくとも植民地下の朝鮮では、たびたび独立運動が起こったり、農民等が義兵を組んだり、抗日パルチザンが活動したりと、植民地下の朝鮮人の多くが、無抵抗の『弱虫』などではなかったという事例は多数挙げられる。このことは教科書レベルの歴史理解では常識なのだが、何を言っているのだろうか？

そこに輪をかけるのが、よりによって橋下のこの発言だ。
＞歴史家がやるようなさまざまな発言は控えなければいけない
自己の偏屈な自尊心の赴くまま、都合のいいところだけを掻い摘んだ歴史観を身につけちゃってたもんだから、本当に歴史家に任せておけばよかったのに思わず口から出てしまった自らの発言が、今般の事象の全ての発端であることを、ここ１カ月程度で本当に忘れてしまったかのような、拍子抜けするような発言だ。もうこうなったらワケが分からない。

このクダリだけ見たら、まさに大阪の下品な漫才の世界ではないか？「お前が言うなぁ！」の大絶叫と右手のスナップで、大阪じゅうからツッコミを入れられそうなレベルだ。これはもう完全にお笑いの世界だ。

それとも、刺激の強い発言を連日繰り出すことで、マスコミに絶えず晒してもらうという新手の選挙対策なのかもしれない。これでもし票を増やせると踏んでいるのなら、かなり異次元な選挙戦略だ。確かにネット掲示板やヤフーニュースのコメ欄では「維新の会」の評判はウナギ登りのようだ。しかしネット社会はリアル社会の一部であることに違いはないものの、本当に「一部」でしかない。多いのは支持者投票者ではなく、クリックの回数であることは疑いようがない事実だ。

もう全然ダメだ。