いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

朝鮮学校問題を理解するための資料の整理

先日、大阪朝鮮学園大阪府大阪市を相手に補助金給付を求めた民事訴訟の一審判決が下り、大阪朝鮮学園がまさかの全面敗訴となりました。
http://www.sankei.com/west/news/170126/wst1701260077-n1.html

判決文詳細を入手していないのですが、判決報告集会で伺った内容によるとこの判決は、
*原告(朝鮮学校側)が主張した今裁判の本質及びこの差別政策が何故出現したのかという原告側の指摘()については全く答えず、
*被告(大阪府・市)が朝鮮学校のみを排除するために、普遍性や公正性が欠片もない『後だしジャンケン』で拵えた狙い撃ちの「基準」を合理的だと言い放ち、
補助金は「贈与」であるから「出す/出さない」は行政の裁量、という被告が主張さえしていない法解釈をわざわざ持ち出し、裁量だから切り捨てても構わないと言ってのけ、
*行政の不手際や不作為についても司法が追認して『救済』し、
*挙句に補助金の不支給によって、朝鮮学校生徒の就学上の不利益が発生することを「仕方がない」と言い放つ、
まさに『人権の最後の砦』たる司法が自らの存在価値を投げ捨て、公平性・公正性を一顧だにせず、日本が批准した人権規約にも背き、ひたすら行政(政府及び維新系地方公共団体)の意図に寄り添って書かれた、ひどい判決でした。結審から判決までは約半年、裁判官はそれだけの時間を費やし、先般政府が示した『通知(参照:http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20160331/1459442175)の趣旨を追求して、それに辻褄を合わせることに腐心したのです。

)大阪無償化裁判弁護団長の丹羽氏が判決集会で述べたものから引用する。
(1)朝鮮学校に通う朝鮮人子弟とは、日本の朝鮮植民地支配という歴史的経緯に端を発した歴史的な存在であり、その歴史認識に立ち返らないと本質的議論はできない。
(2)今裁判は国際人権訴訟である。種族的マイノリティには普通教育課程のほか、マジョリティより強力に、種族的アイデンティティの涵養のための教育の便宜を確保しなければならないというのが国際的な人権の基準である。日本の現状は大いに劣後し、今補助金不支給もその流れの中にあるがそれは妥当なのか。
(3)朝鮮学校子弟への補助金は、20数年来、継続して、何の争いもなく支給され続けてきたものである。それがある首長の台頭によって問題化され排除されるに至ったのである。北朝鮮暴力団と一緒だと言って、政治的な攻撃によって排除したのである。政治家の政治的主張によって、朝鮮人子弟の教育・福祉が断絶されるのは妥当なのか。

こんなものを認めるわけにはいきませんし、こんなものに黙っていては、全国各地で繰り広げられている行政訴訟が、法治も理屈もほったらかしに雪崩を打ったように『100:0』で負けることにもつながってしまいます。朝鮮学校を支える者が、しっかり考えや理論を整理し、自らの正当性を確認し、正義は我の側にあることをしっかり打ち出して戦っていかなければなりません。

そのために、約2年前にアゲた論点整理のエントリー(http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20150112/14210446)をベースに、加筆・修正をしたものを再掲します。
朝鮮学校問題を正確に理解するための一助となれば幸いです。



【1】当ブログのエントリーのまとめ
当ブログでは、何度も朝鮮学校について触れてきました。そのなかでも朝鮮学校の理解及び無償化・補助金闘争の論点整理に有効と考えるものを列挙します。

2011-09-06 朝鮮学校について、親の立場で考えてみる。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20110906/1315331441
2011-09-14 朝鮮学校無償化排除にきっぱりと反対する。理不尽だからだ。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20110914/1316010150
2012-02-08 拉致問題の解決と朝鮮学校への圧力が何で結びつくのか全然理解できない。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20120208/1328713301
2012-12-26 「高校無償化」は朝鮮学校には結局不支給 ― 子供たちへの差別の固定化を憂う
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20121226/1356494138
2013-01-11 朝日新聞の朝鮮高校無償化排除反対の社説 ― 0点の駄文
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20130111/1357875261
2013-02-20 朝鮮学校補助金代わりに「拉致本」支給 ― 日本政治の劣化が止まらない
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20130220/1361364369
2013-02-26 朝鮮学校補助金の代わり、「拉致本」の次は「切手」? 埼玉県知事の人権感覚に恐怖する。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20130226/1361849728
2013-08-20 保護者、在日同胞、日本人、大学教員、韓国の芸能人… ― みんなで朝鮮学校の子供たちの学びを支える。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20130820/1376958063
2015-03-04 아이들아 이것이 우리 학교란다(子供たちよこれがウリハッキョだ)
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20150304/1425483134
2015-04-12 朝鮮学校について、改めて親の立場で考える。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20150412/1428851268
2016-02-18 日本政府、朝鮮学校への補助金完全凍結を指導 … また朝鮮学校を『利用』するのか?
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20160218/1455808854
2016-03-23 朝鮮学校補助金排除反対の朝日の社説 ― 私も思う、子どもらに責任はない。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20160323/1458749805
2016-03-31 日本政府、朝鮮学校への補助金交付に『留意』を通知 ― 朝鮮学校生徒へのレイシズムそのもの
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20160331/1459442175
2016-05-25 『朝鮮学校への地方公共団体補助金に対する政府の不当な介入に抗議する研究者有志の声明』に全的に賛同します。
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20160525/1464135962



【2】朝鮮学校無償化問題FAQ
朝鮮学校を高校無償化から排除する動きについての、基本的な問題点の整理は、こちらでほとんど成されております。
http://seesaawiki.jp/mushokamondai/



【3】歴史教科書 在日コリアンの歴史
在日コリアンという人種がどのように生み出されたのかを端的に知るために。

歴史教科書 在日コリアンの歴史

歴史教科書 在日コリアンの歴史



【4】知っていますか、朝鮮学校
朝鮮学校が何なのか知らない、まったくの初心者にはおすすめ。

知っていますか、朝鮮学校 (岩波ブックレット)

知っていますか、朝鮮学校 (岩波ブックレット)



【5】「無償化連絡会・大阪」結成集会レジュメ
高校無償化法適用に向けての連絡会が大阪で立ち上がった際の結成集会で貰ったレジュメ。問題点が端的にまとまっており、論点整理に有効。
特に、これまでどのような経緯で無償化から排除され、補助金が打ち切られるに至ったのか、時系列を追うのに有用。
無償化連絡会大阪レジュメ.pdf 直



【6】「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書
高校無償化法の適用から朝鮮学校のみが外されているということが、「法的に」筋が通らない、ということを、「法的に」理解する学習資料として有効。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/
特に、こちらに掲載されている、『パブリックコメント』に寄せられた高林敏之氏の稿は、理路整然と論点がまとまっておりとても参考になります。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/20130110



【7】公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則の一部を改正する省令案に関するパブリックコメント意見公募手続)の結果について
それに対し、「朝鮮学校に高校無償化法を適用しないのは妥当だ」と強弁する日本政府の文書。言い訳文書としても非常にレベルが低いことが分かります。まさに「判で押したように」朝鮮学校はキタチョーセンで、拉致問題が解決していないからダメだと言っています。つまり自らの政治課題が解決していない責任を子供らに押し付け、政治的に敵対する北朝鮮の勢力に属する子供らを差別的に取り扱います、と国家が高らかに宣言したわけです。歴史的な文書と言えるでしょう。そして今般の大阪地裁判決に、その論拠の稚拙さが受け継がれているのです。
パブコメ結果.pdf 直



【8】「朝鮮学校への嫌がらせ裁判に対する意見書」
同志社大学の板垣竜太准教授(社会学部・朝鮮近現代社会史)が、京都朝鮮第一初級学校襲撃事件民事裁判に提出したもの。朝鮮学校の現在、及びその歴史を眺めるうえで非常に有益。世間では朝鮮学校が朝鮮政府と親和性を保っていることで「キタチョーセンの学校」と評価されていますが、本意見書では、朝鮮の教育機関と一体というわけではなく、あくまで在日朝鮮人のための学校であることが客観的に証明されているのをはじめに、朝鮮学校が歴史上日本政府からどのように扱われ、その中で、在日朝鮮人当事者がどのように思考、行動したのかが詳細に記述されています。
朝鮮学校の嫌がらせ裁判に対する意見書.pdf 直



【9】 【Q&A】大阪の朝鮮学校大阪府「私立外国人学校振興補助金
たぶん、2012年の「無償化」連絡会でもらった資料。「無償化」除外の動きと一体で、大阪府・市の補助金が廃止されました。その不当性を考えるうえで有益な資料。
【Q&A】大阪の朝鮮学校と大阪府「私立外国人学校振興補助金」.pdf 直



【10】朝鮮学校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A
同様に、「無償化連絡会」でもらった資料。「高校無償化法」の適用が、朝鮮学校にだけ適用されないことの不当性を学習するのに有益。
朝鮮学校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A.pdf 直



【11】高校無償化裁判―249人の朝鮮高校生たたかいの記録
東京の無償化裁判のことが中心に書かれていますが、すべての高校生に学ぶ機会を確保すると宣言した無償化法から朝鮮学校のみがはじかれるに至った流れ、各裁判の主張や論点と裁判所に提出された訴状なども参照することができます。

高校無償化裁判―249人の朝鮮高校生たたかいの記録

高校無償化裁判―249人の朝鮮高校生たたかいの記録



【12】朝鮮学校物語 あなたのとなりの「もうひとつの学校」
韓国で出版された本の日本版。実は最近韓国では朝鮮学校に対する理解を深め、支援をしようという動きが少しづつ起きています。この本では、朝鮮学校がどのように起り、変遷したかという歴史解説とともに、内部の人間(学生や保護者)に焦点を当て、何故朝鮮学校に子供を送るのか、が身近に感じられるのが特長です。

朝鮮学校物語  あなたのとなりの「もうひとつの学校」

朝鮮学校物語  あなたのとなりの「もうひとつの学校」



【13】人種差別撤廃委員会による日本の第7回〜9回定期報告に関する調査最終見解
国連の人種差別撤廃委員会による日本政府への勧告文書。朝鮮学校への「高校無償化法」の適用、地方自治体の補助金等回復についてはパラグラフ19で言及され、付則では「特に重要な勧告」だと付言されています。この審査過程において日本政府は、前記【7】にも挙げたように、「学校が朝鮮総連と密接な関係にある」「拉致問題が進展していない」ということを堂々と言ってのけ釈明して見せましたが、この釈明は、最終見解ではまったく採用されていません。逆に「国連の場で、政治的な理由をもって朝鮮学校のみを排除することを露骨に表明した」と、委員の怒りを買っています。
調査最終見解.pdf 直



【14】地裁判決を受けてのコメント
判決報告集会で配られたもの。大阪朝鮮学園・無償化連絡会大阪・ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会(韓国)、3者によるコメント。
敗訴コメント.pdf 直




【15】大阪無償化・補助金訴訟関連年表
判決報告集会で配られたもの。政治によって朝鮮学校の子弟が如何に翻弄されているのかが分かります。
高校無償化関連年表.pdf 直