いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

学習資料の紹介 − ヘイトとは?(のりこえねっと作成)

約半年ぶりの更新となってしまった。
この間、仕事上のプロジェクトやら種々のしがらみやらでなかなか時間が取れなかったこともあるが、何よりもこの社会が際限なく劣化を続けるなかで、最早語る言葉を失っていたというのが実際である。ただアタマの中で組み立てていた考察については、追々文字にしていこうと思う。つい最近、ある在日ブロガーと接触する機会があり、自分なりに刺激を受けた。やはり微力ではあるが、細々ではあるが、発信する意義があると実感した。どれだけできるかはわからないが、今後も「いち在日朝鮮人の視点」を残していこうと思う。



今回は、『のりこえねっと 〜 ヘイトスピーチレイシズムを乗り越える国際ネットワーク』が作成し、著名な在日朝鮮人の文化人である辛淑玉さんが出演する、「シリーズ ヘイトとは?」という学習資料を紹介する。
既に出回って相当程度経っており、比較的よく知られたコンテンツなのだが、よくできた学習資料であり、ヘイトスピーチレイシズム・排外主義を理解する上での教育教材として一定の価値があると考えるところから、20回のシリーズ全部を並列的に提示する。



第1回「ヘイトスピーチとは何か」

http://www.youtube.com/watch?v=cRpz0RoGGf8

第2回「ヘイトクライム

http://www.youtube.com/watch?v=2BETF713Ug8

第3回「朝鮮人は出ていけ」

http://www.youtube.com/watch?v=1VtcZEplTBM

第4回「『ニガー』という言葉」

http://www.youtube.com/watch?v=UpBZO-l3ZNw

第5回「沈黙効果と過剰適応」

http://www.youtube.com/watch?v=4etmtyZXWWg

第6回「ルワンダでおきたこと」

http://www.youtube.com/watch?v=eHLuIcmDcQM

第7回「犯人は外国人風」

http://www.youtube.com/watch?v=sDwbI_DhfVw

第8回「相撲をめぐるレイシズム

http://www.youtube.com/watch?v=1ytEEBTakJ8

第9回「『三国人』という言葉」

http://www.youtube.com/watch?v=Tj5y9Pd1P2o

第10回「日本人ではない」

http://www.youtube.com/watch?v=1a4NH7ncakc

第11回「僕には黒人の友達がいる」

http://www.youtube.com/watch?v=_1CVwyKZdt0

第12回「朝鮮人が井戸に毒」

http://www.youtube.com/watch?v=qqr6MFugazg

第13回「アイヌ民族はいない」

http://www.youtube.com/watch?v=oO14YG7Y360

第14回「日本人の血税

http://www.youtube.com/watch?v=vUFHg_Wkw6k

第15回「竹田恒泰の外国人嫌悪」

http://www.youtube.com/watch?v=7f4DLCDQ41I

第16回「違法デモ」

http://www.youtube.com/watch?v=N57YK0dUAow

第17回「言論の自由

http://www.youtube.com/watch?v=7aJUF7hpVWI

第18回「すがわら一秀のヘイトスピーチ

http://www.youtube.com/watch?v=n-Gdr9J54sc

第19回「オーランドのヘイトクライム

http://www.youtube.com/watch?v=5y9mePuj48o

第20回「公人のヘイトスピーチ

http://www.youtube.com/watch?v=MtFQOzP2hN0



制作日が2016年の2月から7月で全20回、ほぼ1週間に1回の更新でリリースされている。これらを連続で見て驚いたことがある。一般論を提示しているものが中心であるが、時事的なネタ(相撲の件、熊本地震の件、アイヌの件など)を追っているものも多い、ということである。これがリリースされていた約半年の間に、これだけタイムリーに差別事件が発生し、結果このコンテンツにネタが供給された、ということを意味する、ということだ。

思えば昨年も、差別事件が次々と起こっては消えた。
先に挙げた熊本地震の際の「朝鮮人が井戸に毒」デマを筆頭に、市場ずしで韓国人観光客に勝手に大量のわさびが盛られるわさびテロ事件、韓国人観光客がバスの乗車券を買えば名前を勝手に蔑称で振られる事件、大阪府警の警察官が沖縄・高江で抗議する市民に向かって土人となじりそれを大阪府知事の松井が無神経に擁護した事件、道頓堀で韓国人旅行者が暴行を受けた事件、日本で生まれ育ったタイ国籍の少年を国外退去させると裁判所が言えば官房長官法治主義だとふんぞり返りネトウヨ喝采を送る事件、新しく誕生した都知事が早速に韓国人学校に土地を貸さない都民ファーストだと高らかに宣言した事件、沖縄では国の暴政がなりふりかまわず沖縄の市民が幾ら抗っても一顧だにされないいつ終わるとも知れない事件等々、挙げだせば本当にキリがない。そしてそれらほぼ全てが、まともに報道されず、あるべき批判にさらされず、文字通り垂れ流されていった。

今回のエントリの主旨とは逸れるので端折って書くが、
石原慎太郎黒シール事件の際に徹底的に糾弾されなかったことで政治生命を終えることなくのうのうと生き長らえ、その結果幾多の差別主義政策及びその犠牲者が量産されたように、
*朝鮮がらみの事件が起こるたびに朝鮮学校生徒のチマチョゴリが切られたことが徹底的に糾弾されなかった結果、いまとなっては生徒が通学途上にチマチョゴリを着ることすらできなくなったように、
差別事件の最初の段階で、あるべき批判や糾弾がされず、中途半端有耶無耶にされたら、『調子に乗って』、『付け上がり』、より差別はエスカレートする。
今年のように、差別事件が余りに頻発し、どんどん規模や激烈さを増していくと、ちょっとやそっとではだれも驚かなくなり、逆に問題にする者が疎ましい者として扱われるようになる。
差別と対峙するうえで、あるべき知性・理性・拒否感・嫌悪感がどんどん薄れ、その環境に慣らされ、声を挙げなくなっていく。
『感覚の鈍麻』だ。
そして、この『感覚の鈍麻』こそが、差別主義者がより差別を謳歌できるようにし、被差別者がより窮屈になることを強いられるものであり、人類が幾多の犠牲と学習を持って積み上げてきた知性を否定するものなのだ。
最早日本の今日の光景は、差別主義者が大手を振るって跋扈できる最終段階に入ったと私は認識しているが、あるべき感性・知性を回復するためにも、この社会の現状を、少数者はどのように捉えているのか、この学習教材を以て学んでほしい。



今年は何とか落ち着きそうなので、不定期更新は平常運転だが、何とか色々と書いていこうと思う。少しでも日本社会から差別が少なくなり、次の世代が多文化共生社会で青春を謳歌できることを信じて。