今般の神奈川県相模原市での障がい者殺傷事件に絡み、「犯人はザイニチ」という言説がネット上で沸き立っている。
【観覧注意】こういう悪質なデマが拡散されていますのでご注意を 藤岡信勝も騙されているようです。 pic.twitter.com/QMIgSnGRZD
— OoA本部公式【日曜ぺ21b】 (@OoA_jpn) 2016年7月27日
新しい歴史教科書をつくる会の前会長(現理事)の藤岡信勝はクソレイシスト(知ってたけど) pic.twitter.com/OSZCm3WWUM
— 石野 雅之 (@nocchi99) 2016年7月27日
【在日犯罪】戦後最悪の障害者大量殺傷事件
— 空☺日本のこころ (@tyo21sky) 2016年7月27日
植松聖(26)在日朝鮮人
同級生の証言「韓国籍で悩んでた」
知人の証言「SEALDsに倣った抗議活動」
在日暴力集団しばき隊「犯人は右翼ニダ」←嘘がバレるwww#通名廃止 #都知事選 pic.twitter.com/eeNWrolmpW
かなり無理あるこじ付け。顔や名前がそれっぽいとか。聖→キリスト教徒→韓国人に多い→在日という飛躍とか。障害者を差別する容疑者を更にネトウヨが人種差別してご満悦。アホらし(u_u)
— 河瀬与志雄(平和で豊かな民主社会の為に) (@r1f0sef8UDyO2XB) 2016年7月29日
植松聖はやっぱり在日だった!!?その証拠を徹底解説。 https://t.co/aTsldBVZV4
約10分でこれだけ収集できる。
ネットにおける毎度毎度の光景であるのだが、猟奇的な事件、理解不能な出来事があると、早速、「犯人は日本人ではない」「これは日本人の発想ではない」「犯人はザイニチ」と、盛大な『切断作業』が繰り広げられる。過去には石原慎太郎が再三このテの発言を繰り返した完成形であるが、比較的最近でも有名どころで以下のようなものがある。
小金井ライブハウス殺人未遂事件で逮捕された人物は「自称・岩埼友宏容疑者」と報道されている。自称ということは本名でないということ。なぜ本名で報道しない?ここが日本のメディアのおかしいところ。臆する必要はない。本名で報道すべき。これは私の憶測だが、容疑者は日本国籍ではないと思われる。
— 竹田恒泰 (@takenoma) 2016年5月22日
各地の図書館でアンネの日記が破られているというニュースに、瞬間日本人の感性ではない、日本人の仕業ではないと思った。ディスカウントジャパンに精出す国、安倍総理をヒットラーに例える国もある。図書館にも隠しカメラがあるの嫌だが、徹底して調べてほしい。不可解な事が多発する日本、要注意だ。
— 中山なりあき(中山成彬) (@nakayamanariaki) 2014年2月21日
この種のことは、今に始まったことではない。
*いいことをするのは、日本・日本人、日本を好きな人
*悪いのは、韓国・中国・ザイニチ、日本が嫌いな人
という単純な図式で、「我」と「彼」を分離し、「彼」を落とし、下げることで、「我」を保全しているのである。
このような言説に依って立つ者は、「我々の側ではない」「我々には関係のない変な人」という風に、「彼」を外野に押し込んで、思考を停止させることのみに関心があるのであって、本当に「彼」がザイニチかどうかというのは重要ではないし、どっちでもいいことなのだ。ザイニチと認定した時点で「彼」で確定なのだから。
結局、ザイニチとは、「よくわからない人=犯罪者(あるいは予備軍)」という記号で用いられているのであるが、このように犯罪者が逐一とザイニチ認定され、日々ザイニチの悪いイメージが自らの周囲で積みあがっていくわけだから、ザイニチ当事者にとっては、愉快であろうはずがない。
このように差別的な言説がこうもやすやすと良心の呵責もなく次々と垂れ流される日常、日本において差別的な言動を繰り出すことがこれほどにも障壁が低い現状こそが、この社会で差別の芽を徹底的に育て、今般の事件はそれが「成木」として顕在化したのである。
少なくとも、今般の、日本の犯罪史上にもまれにみる、圧倒的な犠牲者を生みだした差別事件・ヘイトクライムを前に、自らもまた差別主義を繰り出そうと考える輩が、次から次へと沸いて出てくる現実に、私は吐き気を禁じ得ない。
そして、このように『ある属性が犯罪性向を備える』ということに対して、まともな反論を試さず、自らの頭で思考しなかった『声なき傍観者』が、かの日ナチを支え、かの日東京で朝鮮人を殺しまわったのである。私はこの日本社会の空気に、ジェノサイド前夜のキナ臭さを感じて久しいが、政治から、人々から、この空気を打ち消そうという意気も乏しいことに、改めての絶望も感じている。