橋下大阪市長が在特会と面談? ― 橋下サン期待してますよ(棒読み)。(20140926追記あり)
サラリーマンは転勤がつきもので、更新もままならなかったが、久しぶりに記そうと思う。
京都朝鮮第一初級学校への襲撃で高額の賠償命令が出たのに、反省したり解散したりするどころか、引っ込みがつかなくなって、より過激化先鋭化する在特会などによる街頭でのヘイトスピーチだが、その抑止策を検討しているらしい大阪市の橋下市長が、在特会側との面談に意欲を見せているらしい。
「聞かせてもらう」橋下市長が「在特会」との“直接対決”に意欲
MSN産経ニュース 2014.9.19 11:21
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140919/waf14091911210018-n1.htm
(引用開始)
街宣活動で民族差別などをあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)の抑止策を検討している大阪市の橋下徹市長は19日、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)側から面談の申し入れがあったことを明らかにした。「日程調整し、公開の場で討論させてもらいたい」と面談に意欲をみせた。
在特会は京都市内の朝鮮学校周辺で行った街宣活動について大阪高裁から「人種差別」と認定、賠償命令が出され、上告。橋下市長は7月、この裁判について言及した上で「表現の自由を超えたひどいもので、大阪市内で認めないというメッセージを出す」と抑止策の検討を表明していた。
橋下市長によると、その後、在特会側から「橋下市長がスピーチの中身を知らずに批判するのはおかしい」との指摘が寄せられたという。
橋下市長は「(面談で)どんなスピーチをするか聞かせてもらう」と述べた。
(引用ここまで)
Web上では見つけられなかったが、大阪のローカルニュースによると、橋下氏は「ボクはどの団体の面談要請にも基本的には応じる」「日程は在特会側の都合に合わせる」と言っているらしい。
うーん、おかしいなぁ。
私の記憶が正しければ、一昨年、元『従軍慰安婦』のハルモ二が、彼女らを蹂躙する発言を繰り返す氏に対して「それなら会おう」と言ったのに対しては、「予定が合わない」「面談希望なんて幾らでもあるんだから全部会うわけにもいかない」とか何とか言って逃げ回り、面談予定当日に公休取得しておきながら、当日それに関連したツイートをしまくっていたような?
どうも、氏は相手によって言うことが都合良く変わるらしい。
いっそのこと、『ボクは「相手が強いか/弱いか」「自分に歩があるか/ないか」「人気が取れるか/取れないか」で面談相手を選別し公開如何を選択するんだ、だってボクは衆愚主義の寵児だからね(笑)』、とはっきり言えば、本人も楽になるんじゃないかなぁ、って私なんかは思う。
*「朝鮮人を殺せ」「ゴキブリ朝鮮人」と言って、朝鮮人への排除意識を低劣な文言で白昼に煽る行為と、
*朝鮮学校のみを高校無償化法や公金扶助の適用外とすることで、朝鮮人が朝鮮人として成長しようとすることを、低劣な屁理屈で排除する行為は、
思想として同根であり、私にはそのどちらにも醜悪な差別性、土着のエスノセントリズムの根深さを感じる。
氏は、ご存知なんだろうか?
*民族教育の根本を否定するために、他のどの学校にも求められていない補助金支給要件を、朝鮮学校のみに突きつけ、吊り上げたり付け足したりして、結局補助金支給を取り止めたり、
*彼の使者を朝鮮学校の学舎に仕向けて、警察の捜索よろしく「キタチョーセン」の証拠を探し回っては、肖像画があったから朝鮮学校はまともではないなどとブチあげる、
という自身の行為が、国連の人権委員会では、件の在特会の所業と同時に、日本の人権上の重大な懸案として挙げられていることを。
朝鮮学校に子を送る保護者当事者には、この政策が、在特会の「朝鮮人をぶっ殺せぇ」と同質の嫌悪感で捉えられている、という事実を。
氏が、在特会を市庁に招いて公開討論するのは大いに結構だ。しかしレイシストの行為を糾弾するならば、自身発の官制レイシズムについても、同じタイミングで自らが糾弾し是正をするようでなければ理屈が合わない。氏は批判能力の乏しいマスコミを前に、分かりやすい理屈でレイシストの行為を責めて、多少の歓心を買うことで政治家としての失地回復を狙っているのだろうが、氏が眼前のレイシストを責める言葉は同時に、自身に巨大なブーメランとして戻ってくる、ということを認識しなければならない。
まぁ、朝鮮学校に対する自身の政策は、全く触れないか、変な屁理屈で「くちゃ」っと煙に巻く程度で着地することは、残念ながら見る前から分かっている。期待など始めからしていない。とはいえ、氏の面談がきっかけで、在特会ら街宣レイシストの愚行が改めて広く認識され、結果鶴橋や猪飼野のコリアンタウンから、レイシストの罵声が無くなることは、一歩も二歩も進歩だ。このようなヘイトスピーチが社会悪だというコンセンサスが大阪で形成されるなら有益だろう。
少なくとも、来年朝鮮初級学校に進学し、程なくしておのれが朝鮮人という特殊なカテゴリーの人間だと認識するであろう我が息子に、あんな愚劣な人間どものカスのような言動にリアルに接触させることは教育上よろしくない。ある程度強固な自我が確立されるまでは、自分の出自を卑屈に思うような体験は避けるようにしなければならない。その意味で、私の住む地域の目と鼻の先で、恐らく現在の日本で最も汚らしい部類に入るレイシストの行進を見ないで済む、というのは親の立場では正直歓迎する。その意味で、この展開には、ひとりの朝鮮人の親として、少々の期待を寄せておこうとは思う。
しかし、である。同時に一定程度の確率で憂慮される事態も併記しておきたい。
*差別主義者でありポピュリズムを政治手法とする橋下氏
*デマゴギーを盲信し垂れ流すことを屁とも思わないレイシスト団体在特会
*ヘイトスピーチの定義自体をろくに提示できず、レイシズムへの批判能力を持ち合わせないマスコミ
この3者による政治ショーという形態で展開されるのが、今般の公開討論だ。いかにも役者が悪い。レイシズムやヘイトスピーチというものに対する基本理解も、この社会ではようやく初期段階に差し掛かった程度という現在の状況で、この3者によって『訳のわからない結論』に誘導され着地したものが、日本のヘイトスピーチやレイシズムの議論の典型例だというコンテンツとして固定化されることを憂慮するのだ。
すなわち、
*レイシスト団体が「在日特権がどう」だの「朝鮮総連がどう」だの「朝鮮学校がどう」だのと言い出し、自分らの行為の原因(何で俺らがこんなことをしているのか)が朝鮮人の所業所以だという妄想を開陳する
*橋下氏が、それに対する基本知識や情報もないままに、「それはそれでダメだが」などと生返事で受け流し、「そんなヤツらに対峙するにしてもお前らの行為はアカン」的に自分が言いたいことだけ一方的にカメラ向けに吠えて「時間いっぱい」となる
*マスコミがそれに対する批判や分析もなく、それら一切を論評なしに垂れ流す
結果、人種一般への憎悪を煽るレイシストの行進にも『一定の根拠』があるが如くに議論が着地し、「在特会はダメだがチョーセンも悪い」的、喧嘩両成敗的空気感が醸成される、というのが、私の憂慮するところだ。
これは差別の再生産に他ならない。橋下氏が行わんとする政治パフォーマンスが、結果在日朝鮮人への偏見を喚起するようなことに着地したのではどうしょうもない。
私は、在特会への社会的批判を、よりによって『札付きの』橋下氏が持ち出したことに警戒を隠さない。氏はこれまでも自身の統治能力をひけらかすために、犠牲者を多数量産してきた。朝鮮学校は言うに及ばず、市役所の労働組合、文楽協会、大阪市音楽団、ピースおおさか、桜宮高校、、、枚挙に暇がない。氏によってこねくり回されて『訳のわからない結論』『よくわからない着地』をしたものばかりだ。氏が政治パフォーマンスの具として在特会を消費した結果、在日朝鮮人一般が、今よりも『下げられた』のではたまったものではない。そんな乱暴な結論に誘導するなら「やってくれるな」ということだ。
橋下氏には、自身の差別主義にも向き合いながら、国際的に認知されている人権主義の価値観を共有したうえで、「レイシズム=絶対悪」という結論に毅然と誘導されるよう、注文をつけておきたい。
(蛇足)
大阪府のホームページにこんなのがありました。
『差別と思われる事例をお寄せください』
http://www.pref.osaka.lg.jp/jinkenyogo/sabetsujireiboshu/index.html
橋下氏の政治勢力が、自身の政策が差別主義ど真ん中であるという自覚がない、という典型例。
「朝鮮学校への策がどストライクですよ」と書き込んでやろう、と思っている今日この頃。
まぁ、素で無視されるのが関の山だろうが。
(20140926追記その1)
私がいつも信頼を勝手に寄せさせていただいている、有名ブックマーカーであるunorthodoxさんが、当エントリに対してtwitter上で非常に有効な指摘をされておりました。私とのやり取り含め共有したいと思います。
(ツイート引用開始)
unorthodoxさん:
エントリの主旨には私も同意なのだが、その一方で、「ヘイトスピーチが社会悪だというコンセンサス」が形成されることへの期待を寄せている部分については、いささか甘いのではないかという危惧も覚える。
「官制レイシズム」を是正するつもりは橋下にはハナからないだろうし、それなのに「ヘイトスピーチ」をこれ見よがしに問題視してみせようとしている。これが何を意味するのかを、まず警戒せねばなるまい。
自ら差別に手を染める者が眼前の"わかりやすい"レイシストを責めてみせることは確かにブーメランでしかない。
しかし果たしてこのニッポン社会で、それが正しくブーメランだと認識されるだろうか。それがブーメランであることを認識するための前提が整っているだろうか。
あえて言うならば、必要なのは「ヘイトスピーチが社会悪だというコンセンサス」ではなく、「差別が社会悪だというコンセンサス」だろう。
これが無いままでいくら「ヘイトスピーチ」を論じてみせても、その他の差別を逆に温存するための免罪符にしかならない。
dattarakinchan:
ツイートありがとうございます。確かにヘイトスピーチ対策という領域のみで対差別政策が完了!感を出されることは大いに警戒すべきですね。ヘイトスピーチは皆に分かりやすい差別ですが、皆に差別と認識すらされていないことはこれ以外にも幾らでもあるわけですからね。
unorthodoxさん:
いえ、重箱の隅をつつくような事を言ってしまい申し訳ありませんでした。
「ヘイトスピーチ」という言葉が独り歩きし、何が「ヘイトスピーチ」を産み出しているかという肝心なことはなかなか語られない状況において、「官製レイシズム」が「思想として同根」だと真っ直ぐ指摘する貴エントリのような言説は、とても貴重なものだと思います。
ヘイト街宣がなかった昔は良かったみたいな脳天気なことを言いふらしてる人もいるらしいけど、そんな訳はない。
「在特会」どころかネット自体がなかった大昔から、朝鮮人は出て行けみたいなおぞましい雑言を撒き散らす奴は既にいたのですし。
「ヘイトスピーチ」も要するにニッポンに昔からあった差別のバリエーションの一つなのであって、平和だったニッポン社会が突如として「ヘイトスピーチ」に汚染された、みたいに考えるのは誤っていると、私は思います。
私が危惧するのはやはり、他の差別者が「ヘイトスピーチ」のみを殊更に非難してみせて自分の差別性の隠れ蓑にすることであり、差別の問題を語るにあたってそれはゼロどころかマイナスの影響しか及ぼさない、ということです。
そして「ヘイトスピーチ」のあからさま具合や激しさを理由に、ニッポン社会そのものの差別性から、今は緊急事態だからと火事場泥棒的にそれを切り離そうとする企みにも、重々警戒する必要があると思います。
(ツイート引用ここまで)
私たちが抗わなければならないのは、あらゆる差別についてであり、その一部を都合よく取り出してきてポピュリズムの具として消費しようとする魂胆がミエミエの橋下一派に、まがいなりにも『期待』などという文言を用いてしまった浅はかさを、いまは恥じております。
しかしながら、unorthodoxさんのご指摘にも免じて、少し言い訳をしますと、
在特会のような下劣で品性のない輩が、鬱憤晴らしや娯楽としてのヘイトスピーチを権力に護られながら実行できているというのが現在の状況です。差別語のバリエーションを日々増やし、過激さを増してきている。我々在日朝鮮人は街頭で、ネット上で、糞よりも汚いものを日々投げつけられているのに耐えなければならない状況に置かれている。
これを何とかしたい、橋下が人気取りでであってもこの状況が改善されるのであれば、それはそれで一歩でも前進だ、と考えたのです。鶴橋は私の家族が棲む町の目と鼻の先です。遠くない将来自分の運命を自覚するであろう我が息子が、それを目撃して自分の運命を呪うことは、絶対にあってはならない、親としてそう思うのです。
あらゆる差別の根絶を目指し、今後も書いていくつもりですが、ただ日本における朝鮮人差別に関して言えば、1800年代から続いて、最早染みついている差別思想ですし、行政や民心が必要としている差別なので、そんなに簡単に払拭できるものではないと、残念ながら考えています。それこそ我が息子の世代に譲らなければならない課題だと。
しかし少なくとも、ヘイトスピーチのような、愚劣であってカジュアルでさえある差別は、社会の嫌悪感が鈍磨しないうちに、社会のコンセンサスとして確立しないといけない、と思います。このコンセンサスさえも確立できないようなら、差別への垣根が、それこそどんどん低くなってくるような気がします。ヘイトスピーチの解消は、これ以上のあらゆる差別がダダモレになることを防ぐ意味でも大事だと思います。こんな分かりやすい差別がダダモレる社会は、もっと激烈な差別をも容易に許容するのではないか、と。『ブロークンウインドウ』の解消と言いましょうか、これぐらいはすぐにでも社会の英知で防止できるやろう、と。そう思います。
(20140926追記その2)
どうも、私が危惧していたことが現実化しそうで。結局アンタは何も分かっちゃいないし、人気だけ取れりゃそれでいいんや、と。
ヘイトスピーチで橋下氏 被害者側との面談拒否
スポーツニッポン 2014年9月25日 18:30
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2014/09/25/kiji/K20140925008992290.html
(引用開始)
橋下徹大阪市長(維新の党代表)は25日の記者会見で「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)と呼ばれる人種差別的な街宣活動に関し、被害に遭う在日コリアンを支援するNPO法人「コリアNGOセンター」(大阪市)から求められた面談には応じない意向を表明した。
橋下氏は「市民局が要望を聞く。僕が出なければいけないことと、そうでないことを分けさせてもらいたい」と説明した。
同センターは、橋下氏が応じる考えを示している「在日特権を許さない市民の会(在特会)」との面談よりも、被害者側との意見交換を優先すべきだと主張。橋下氏との面談を求める要望書を提出していた。
橋下氏は在特会が問題視する在日コリアンの特別永住資格に関しては「そろそろ終息に向かわないといけない。未来永劫続けるものではない」と同調。一方で「制度がおかしければ、つくった国に言えばいい。責任のない人々に『死ね』などと暴言を吐くのは意味がないし、ひきょうだ」と重ねて活動内容を批判した。
(引用ここまで)