いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

朝鮮女子卓球代表選手の土産を奪う日本政府の対応に呆れる(20140507追記)

明日からまたクソ忙しいので短く記す。

世界卓球選手権を終え帰国する朝鮮代表選手団に、日本政府はとんでもない「追い帰し方」をしでかしたようだ。記事を引用する。



【卓球】北朝鮮代表、成田でお土産など没収…世界選手権終え離日
産経MSNニュース 2014.5.6 16:20
http://sankei.jp.msn.com/sports/news/140506/oth14050616200013-n1.htm

(引用開始)

5日まで東京・国立代々木競技場などで開かれた卓球のJA全農世界選手権団体戦に出場した北朝鮮代表の選手団13人が6日、成田空港から離日した。北京経由で平壌に戻る予定。在日関係者らが見送る中、一行は笑顔で手を振りながらゲートに向かった。

空港では発券前に特設の荷物検査場が設けられた。関係者によると、日本で購入した卓球用品やお土産などが没収されたという。

政府は北朝鮮籍保有者の入国を原則禁止しているが、政治とスポーツは切り離すべきだとの判断から特例で査証(ビザ)を発給した。

(引用ここまで)



スポーツの国際大会を催すのであれば、その出場選手に入国や滞在中の便宜を図るのは当然であるのだから、
政府は北朝鮮籍保有者の入国を原則禁止しているが、政治とスポーツは切り離すべきだとの判断から特例で査証(ビザ)を発給した
などというキャプションは、誠に馬鹿げた『産経的』物言いなのだが(仮にFIFA主催試合で朝鮮選手を差別的に取り扱ったら罰金程度では済まない)、
空港では発券前に特設の荷物検査場が設けられた
日本で購入した卓球用品やお土産などが没収された
ように、朝鮮選手だけ敵国の選手だということで敵対的に取り扱い、選手らのささやかな思い出の品すら奪うという、なりふり構わずの妄動に呆れかえる。

日本政府は、世界中から迎えたスポーツ選手を「日本での大会は設備も歓迎ぶりも素晴らしかった」「また来たい」と思わせて帰すべきだとは思わないのだろうか?そのように日本に好印象を抱かせて朝鮮に帰すことは、来るべき国交正常化や拉致被害者救済に正の影響を与えることにすらも気づかないのだろうか?

この国は6年後にオリンピックを開こうとしているのだが、本気で言っているのだろうか疑いたくなる。今回の事件は、自分らは政治的事由で選手や観客を選別し、「歓迎」と「追い帰し」を使い分けるということを宣言しているのだが、6年後、オリンピックともなれば世界中から選手や観客が来る。その時に日本政府が「朝鮮人だけは、お・も・て・な・し、できません」と宣言して憚らない保証など無い。

素晴らしいスポーツの本気のぶつかり合いを、後味悪く締め括った日本政府。その姿勢にはスポーツや選手に対するリスペクトはまるで感じられない。こんな度量の無い国なら、スポーツの国際大会のホスト国などに手を挙げるな、ということだ。まかり間違ってもオリンピックのホスト国なんぞ、悪い冗談である。





(20140507追記)


イムリーに記事をアゲたことにより、珍しく多くの方々に読まれたようだが、短く書いたこと(≒端折り過ぎたこと)によりミスリードや誤解が多い。
追記により軌道修正及び追加説明を試みる。


1)コメント欄、ブックマークを見るに、日本政府の今般対応は「国連による制裁決議に基づく全面禁輸に対応した当然の措置であるから仕方が無い」という指摘が多い。ブックマーカーの多くはそのような指摘に盲目的に賛意を示し☆を付けまくっているのだが、もう少しお調べいただければどうか?
「制裁決議」とは、恐らく『安保理決議第2094号』を指していると思われるが、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/anpori2094.html
この決議は「全面禁輸」ではない。上記URLの下のほうに禁輸品が列挙されているが、「卓球用品」「手土産」がそれに当たるというのはどう考えても無い。
仮に国連の全加盟国に全面禁輸を課しているという決議なのなら、何故朝鮮国内で中国の物資が溢れ、エジプトとの合弁企業による携帯電話が輸入できるのか。
3秒程度脳味噌を動かしていただければ分かる話だが。


2)これ以前に、『安保理決議第1718号』を根拠に、日本政府はいわゆる「奢侈品(ぜいたく品)」の輸出禁止措置を講じるわけだが、その「奢侈品」とは以下のものである。
当時の最高権力者金正日の権力維持にダメージを与えるために金正日の好みを基準に選んだ、という話もある(笑)。
牛肉
まぐろのフィレ
キャビア・その代用品
酒類
たばこ
香水
化粧品
革製バッグ・衣類等
毛皮製品
じゅうたん
クリスタルグラス
宝石
貴金属
貴金属細工
携帯型情報機器
映像オーディオ機器・ソフト
乗用車
オートバイ
モーターボート・ヨット等
カメラ・映画用機器
腕時計等
楽器
万年筆
美術品・収集品・骨董品
上記のどれを見ても、「卓球用品」「手土産」が直ちに該当するとは考えられない。


3)これは、どこまでも日本政府の政策発進による「裁量」に基づき行われているものである。
つまり「外国為替及び外国貿易法」を根拠法にした政令とか運用細則とか、つまり税関当局の匙加減で行われるものである。
朝鮮の年端も行かないような女子選手が個人的に消費する「卓球用品」「手土産」をも難癖をつけることで、日本政府の態度を示した、というのが実際である。


4)もっとも、国連人権委員会の決議で日本政府の在日朝鮮人に対する諸策にたびたび非難を向けているのは良く知られた話である。
しかし日本政府は「決議には法的拘束力が無い」として『黙殺』を決め込んでいる。そのことに対して批判を向けているネトウヨ諸氏を私は見たことが無い。
いっぽうで、今件に関しては「国連決議があるから仕方ないよね」とアンパイを握った瞬間思考停止しているのだから恐れ入る。
それをご都合主義という。


5)私は過去に税関のこのような対応について言及したことがある。併せて紹介する。
北朝鮮からの手土産を全部没収して日本政府はどうしたいのだ?』
http://d.hatena.ne.jp/dattarakinchan/20120410/1334013519
平たく言うと、圧力一辺倒で民間交流をも封殺する、日本政府のなりふり構わぬ施策、法適用、法執行を批判しているのであって、朝鮮であれば何でもかんでも悪魔化するために、憲法や国際人権法の理念を踏みにじりながら、悪法を作り、法を恣意的に適用することが批判対象なのだから、「法治主義だから云々」は、私への批判たり得ない。