いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

在日外国人による生活保護の不正受給 ― 典型的な産経メディアの宣伝記事に吐き気をもよおす

ここ数日間、親族が生活保護を「不正に」受給したなどと、芸能人が次々と槍玉にあげられている。
確かにメディアのネタになっている人たちは親族を扶養するに十分な資力を持っていると推定はされるが、彼らのケースを見る限り、不正だなんだと吊し上げ、カメラの前に立たせて集団リンチにしないといけない必要性はまったく感じない。
しかし、非常にタテマエ感が強い日本のマスコミの論調、姿勢を見るからに、どうやらこの騒動は、当分多数の犠牲者を生みながら日本の茶の間で消費されることになりそうだ。かの年金未加入問題と同じような空気感が醸成されつつある。

そんな中、またまた産経系のインターネットメディアが醜悪な宣伝記事を垂れ流しているので、突っ込んでおく。




生活保護”むさぼる在日外国人!悪質すぎる不正受給の手口とは
ZAKZAK 2012.05.24
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20120524/dms1205241810016-n1.htm

(引用開始)

売れっ子お笑いコンビ、次長課長河本準一(37)の母親が受給していたことで、生活保護制度のいびつな現状が明らかになっている。だが、制度につけ込むのは日本人だけではない。在日外国人による不正受給も急増しているのだ。実は定職を持ちながら、生活保護のほか別の福祉手当との二重、三重取りをして“年収”600万円という世帯もある。関東のある都市には、不正行為に手を染める外国人が集まる団地も存在。日本の福祉制度がしゃぶり尽くされている。

「何でもらえるものをもらわないのか理解できない。日本人はどれだけ間抜けなのか」

男性A(26)は笑いながらこう語る。

両親ともに東南アジア出身の在日外国人2世で、妻と子の3人暮らし。製造会社の正社員として働いている。愛車は、新車価格約300万円の国産車。何不自由ない生活を送りながら、その懐には国から毎月決まった額の“お小遣い”が入ってくる。

「妻が去年から生活保護を受けているんだよ。児童手当やほかの福祉手当を合わせて月20万円が丸々入ってくる。僕の給料と合わせると(月の世帯収入は)50万円ぐらい。年収にすると600万円以上になるね」

本来、生活保護は「生活に必要な収入を得るだけの労働が不可能」な人のみが得られる福祉制度だ。家族を養えるだけの定職を持つAは、この条件に当てはまらず、紛れもない不正受給になる。なぜこんなことが可能なのか。

「妻とは離婚してるんだ。といっても、書類上の話。偽装離婚ってやつだよ。役所に妻に『子供を抱えて生活できない』って訴えさせたら、すぐに(生活保護の)受給が認められたよ」

形式上は離婚になっているため、妻子は別のアパートを借りている。だが実際には、そこに住まず、普段はAの自宅で同居している。

月に1回、ケースワーカーの訪問があるが、Aは「事前に連絡がくるからその時だけ(妻子が)アパートにいればいい。ごまかすのは簡単だよ」とうそぶく。

関東のある都市に住む彼の周囲では、組織ぐるみでカネをだまし取る不正がまかり通っているという。Aが続ける。

「僕が住む団地の入居者はほとんどが外国人。中国人やインド人もいるけど、一番多いのが同郷(東南アジア)の人間だよ。300人は下らない。で、そのほとんどが生活保護をもらっているよ」

生活が困窮し、やむなく受給する外国人もいるだろう。だが、Aと同じような方法で取得しているとしたら、紛れもなく詐欺だ。

厚生労働省によると、今年2月に生活保護を受給した外国人は7万3995人。これに対し、2000年度の外国人受給者は3万2858人(月平均)で、この10年あまりで受給者数は2倍以上に伸びた。

外国人の受給条件について、厚労省の社会・援護局保護課は「永住者とそれに準ずる定住者。さらに、難民認定されている人や、日本人の配偶者がいる人が対象」と説明する。

一定の在留資格さえあれば、誰でも受けられるため、抜け目のない一部の外国人は、制度のおおらかさに目をつけて甘い汁を吸う。

大阪府ケースワーカーとして勤務した経験のある関西国際大学の道中隆教授(社会福祉学)は、「制度を悪用する外国人が増えているのは確かです。生活保護目当てに偽装離婚したり、書類を偽造したりするケースもあった。役所が不正の兆候を認めて問いただしても、『言葉の壁』を利用してわからないふりをしてごまかす者もいる」と実態を明かす。

連帯感が強い外国人は、自国の出身者らで作ったコミュニティーの中で制度利用のノウハウを共有する。なかには親子2代にわたって不正受給する不届き者もいるという。

まさに無法地帯。なぜ、こんな現状が野放しになっているのか。

「給付審査にあたるケースワーカーが圧倒的に少なく、不正をチェックする監視態勢が機能していない。1人で80世帯をカバーしており、その倍以上の案件を抱える者もいる。人手不足で業務を非正規雇用の職員が担当し、『調査したら受給者のほうが高給取りだった』という笑えない話もあるぐらい。健全な制度運用ができる態勢を早急に整えないといけない」(道中氏)

生活保護制度はわれわれの税金で成り立っている。その血税をだまし取ろうと群がる不良外国人たち。日本を彼らの「天国」にしてはいけない。

(引用ここまで)



日夜「産経脳」のトレーニングに余念がない諸氏からすれば、「日本がガイジンに侵略されている」「在日を日本から叩きだせぇ」の格好のネタとなるだろう。実際この記事にリンクをつけたTwitterなどはそのような論調で溢れている。

しかし十秒程度冷静に考えてみればわかるが、この話は以下の論旨に集約される。

>給付審査にあたるケースワーカーが圧倒的に少なく、不正をチェックする監視態勢が機能していない。

制度が機能していないのが問題なのであって、制度設計が悪いことが問題にされなければならない、ただそれだけの話である。制度が機能していないから、文中に登場の識者が言うように『健全な制度運用ができる態勢』が構築されていないから、この記事の「A」のように不正受給がまかり通っている、という話である。

ところが、それが「産経脳」にかかれば、日本に巣くう「不良ガイジン」の話に転化されてしまう。このような不正受給が在日外国人の在留資格や在日外国人固有の特権を持ってでしかなし得ない、という話ならば理解できなくはないが、記事に登場するAも認めるように、ノウハウさえあれば誰でも不正受給できるのだから、ガイジンなのかどうかが問題なのではなくて、制度上の抜け穴が存在することの問題であるのは明らかだ。

ところが、さすがは産経、お見事である。

>制度につけ込むのは日本人だけではない。在日外国人による不正受給も急増しているのだ。
と、制度の悪用が日本人在日外国人関係無しに存在することを言っておきながら、これ以降の記事は在日外国人のそれのみを取り出して叩いている。タイトルからしてその為の記事だと宣言している。数多の犯罪行為のうち、外国人のそれのみを取り出し、その人種を叩き、下げるというのはレイシズムの典型例だが、それと何が違うのか?

>抜け目のない一部の外国人は、制度のおおらかさに目をつけて甘い汁を吸う。
>連帯感が強い外国人は、自国の出身者らで作ったコミュニティーの中で制度利用のノウハウを共有する。
まるで、善良な日本人とは違い「ガイジン」だけが抜け目が無い、あるいは「ガイジン」は日本人より特異に連帯感が強く、それが制度悪用に一役買っているとも言わんばかりの論調だ。連帯感の強いことを責める理由が全く分からない。連帯感が強いことは日本人でも誉められるものではないのか?

そして極め付けが最後の締め。
生活保護制度はわれわれの税金で成り立っている。その血税をだまし取ろうと群がる不良外国人たち。日本を彼らの「天国」にしてはいけない。
「われわれの税金」は日本人の税金という意味なのだろうが、私は生まれてこのかた、幸運なことに生活保護制度に一切頼ることなく人生を歩んでこれた。かたや税金は(給与天引で)ビタ一文負けられることなく、そこそこの額を払っている。
明らかにプールされた税金には在日外国人のものも含まれる。そして法的に永住する資格がある以上、定住者としての福祉サービスを享受できない理由が無い。
それなのに、納税者はガイジンのそれを抜きにして語られ、不正受給者はガイジン「だけ」が取り出されるのか?産経サンが『そっち』に導きたい気持ちが行間から湧き出しているのを感じ取らずにはおれないほど、香ばしい記事ではないか?

最後に断っておくが、引用記事の「A」のような生活保護の主旨を踏みにじる不届き者を擁護する気はさらさらない。問題は「A」が日本人でないことを問題にし、日本人でない「A」の行動を、真面目に働き日本社会のなかで生きる在日外国人一般にまで潜在的な不正受給者として印象づけようとするこの記事の醜悪さについて、そしてこの記事に群がるガイジン嫌いの必死さについてである。