いち在日朝鮮人kinchanのかなり不定期更新日記

はてなダイアリーから移行しました。古い記事ばかりになりましたが、ボチボチ更新していこうと思います。

在日コリアンにはいろいろな人がいます ― 韓国籍と朝鮮籍と…

私たち在日を指す呼称として、いろいろな言葉が使用されています。
ネットでは、これらの定義が使う人によってまちまちで、かなりの誤解をしている例も多いようです。
私の解釈+使い分けの方法を説明することで、いくらかこの人種の理解が進むものと思います。

ただしかなりざっくりした書き方であることは否めません。学術的にはもっと緻密に書くべきでしょうが、その能力がありません。ただ、一次的理解にはこれで必要十分と思います。




朝鮮人朝鮮半島にルーツを持つ者。朝鮮民族とほぼ同義。

韓国人…朝鮮人のうち、韓国の戸籍を持つ者。

韓国籍…韓国の戸籍を持つ者(韓国に帰化した者も含むので)。

北朝鮮人…朝鮮人のうち、北朝鮮に住む等北朝鮮への帰属が明かな者。

北朝鮮籍北朝鮮への帰属が明らかな者。

朝鮮籍朝鮮半島出身者とその子孫で、韓国の戸籍を持たない者(日本での定義)。

在日コリアン…日本に住む朝鮮人韓国籍朝鮮籍北朝鮮籍も含む。いわゆるニューカマーを含まないこともある。




私の解釈では、「朝鮮人北朝鮮人」「朝鮮籍北朝鮮籍」ではありません。日本でいう「朝鮮籍」とは、朝鮮半島出身者であることを示す記号に過ぎず、朝鮮籍であることは、韓国を否定することも、北朝鮮を肯定することも意味しないのです。

たとえば、朝鮮における一方当事国の韓国に帰属することで他方の当事国たる北朝鮮を否定することになりそれを拒絶したいという人や、ただ単に韓国への国民登録が手間だし韓国籍朝鮮籍では差異も無いのでそれをしないという人、などいろいろです。当然北朝鮮の支持という意思表示としてそうしている場合もあるでしょう。(これとは違い帰属の意思を持って北朝鮮のパスポートを所持していたり、北朝鮮の代議士だったりという場合は、「北朝鮮籍者」の要件を外形的に備えるということになるでしょうが。いずれにしろ特殊な例となります)

朝鮮民族、その国籍、在日コリアンを語ろうとするとき、過去において朝鮮は日本の一部であり朝鮮人は日本臣民とされていたこと、大戦後朝鮮の国家が分断したこと、日本が北朝鮮を国家承認していないこと、その他諸々の法的政治的な問題と、人々の思惑が絡み合っています(この辺は本国のゴタゴタも手伝ってかなり複雑です)。

思い込みや偏狭な知識で論を張ると見当違いな論になってしまいます。これらの言葉を使うときも同様、ある程度背景の消化を踏まえて使わないと、要らぬ攻めを仕掛け、攻めを受けた方はお門違いのハタ迷惑、ということになりかねません。

また、こうも言えます。日本人のすべてが、現政権を支持し、天皇や日の丸、靖国などに親近感や畏敬の念を持っている訳ではないように、北朝鮮人すべてが金父子の三世にわたる権力継承を支持しているとは言えない訳です。上記国籍等のカテゴリ分けは、それぞれに属する人らの立場、政治的主張とはリンクしないということも当然に踏まえていなければなりません。

それなのにネット上では、そのようなところまで考えが及ばず、「朝鮮人」というと、全部が全部北朝鮮政府の信奉者、あるいは朝鮮総連の活動をしてて拉致やミサイルに責任がある人間のように短絡的に捉えている向きが散見されます。「朝鮮」という言葉が出てきた瞬間、北朝鮮の現政権に盲目的に追従するという、妄想にも似た固定観念から論拠を作り上げ、ヒステリックに排斥の論を張るのは、余りにも無知であると言わざるを得ません。

私はここで、「韓国籍の在日は、朝鮮籍の奴らとは違って、拉致やミサイルとは関係ないから仲良くしてぇな」みたいに在日の仕分けをし、攻撃の標的を限定したいのではありません。
在日コリアンと呼ばれる人間は、実際帰化した人を含めて何人いるのかはわからないですが(古い記憶だと60万人)、外国人登録の国籍欄も去ることながら、祖先が日本に来た経緯、居住地域と環境、職業、受けた教育、すべて違うわけです。いま北朝鮮の支持を表明しながら生きている在日コリアンにも、発する言葉とは違うところに思惑や打算があったりするのです。(この辺はそのうち別に稿を設けます)
60万人なら60万通りの歴史があり、考えがあるのです。いうまでもないことです。当然に政治的主張も違えば、抱えているバックボーンも違います。民団派か総連派かという単純なものでは全然ありません。これらの組織との距離感は個々人によって違いますし、ひょっとしたらそのどちらにも属していない人のほうが多勢かもしれません。

日本のおばちゃんと一緒になって韓流を追いかけている人もいれば、そのような民族的なものにまったく無関心の人もいるでしょう。自分がナニ人なのかに気づくチャンスすら持たずに育つ人もいるでしょう。北朝鮮の現政権を支持し、自分は貧乏しながら熱心に活動する人も当然いるでしょう。

つまりは、一口に在日コリアンといっても、本当にいろんな人がいるのです。それは日本人にも関西人と関東人、自民党員と共産党員、その他何とでもカテゴリーの分け方はあるでしょうが、本当にいろんな人がいるのとまったく同じことです。

それなのに、「在日」と聞いただけで、ある一定の定型化した政治的主張なりが存在するかのような論拠を張られるのは、どうしても理解できないのです。

日本人にも朝鮮人にも、いろんな人がいるのだから、余り先入観で凝り固まったりではなくて、いろんなことを話し、接することからはじめてほしい、と思うのです。

わざわざ在日を探り歩く必要は無いと思います。

たまたま知り合った人が、あるいは友人知人が在日だったということを知った時から、偏見なく、構えず、ストライクゾーンを少し広げて付き合ってみればいいのです。

そうすれば、インターネットで溢れる在日のネガティブなイメージのほとんどが、悪意に満ちたデマか、無知や未経験、未接触から来る妄想の類であるということがわかるでしょう。

私も、私の周りの多くの在日コリアンも、本当に普通に生活している市民だから、それで当たり前なのです。日本人の中で、日本社会の中で、普通に生き続けている人間なのです。決してモンスターの類ではないのです。それに気づくだけでも付き合い方は変わるはずです。